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「ナイキの厚底シューズ」発売当初は、実は見向きもされなかった!

「日本人インソール技術者」が徹底解説

ナイキの厚底シューズは是か否か――。今年1月、世界陸連(WA)の新規則を受けて、国内外でこうした議論が巻き起こった。

WAの調査委員会によって出た答申は、「現在すでに発売されている『ズームXヴェイパーフライネクスト%』は規制されない」「ミッドソールに内蔵されるカーボンプレートは1枚まで」「靴底の厚さは40mmまで」「4月30日以降に発売される製品は、4ヵ月を経過しなければ使用不可」など。これによって、選手たちは“特注”のプロトタイプを公式戦で使用することは不可能となり、マラソン2時間切りを達成したときにエリウド・キプチョゲ選手が履いていたカーボン3枚入りのプロトタイプは五輪で使用できなくなった。

ところが、WAの答申から1週間もたたない2月5日(米現地時間)、ナイキは「エアズーム アルファフライ ネクスト%」を発表。カーボンプレートこそ3枚から1枚になったが、ソール厚39.5mmという“制限いっぱい”の新作は、早々に市場に投入され、五輪に間に合うシューズとなることが確実になった。

「エアズーム アルファフライ ネクスト%」

なぜこれほどナイキは優位に立つことができたのか。また他のすべてのメーカーは無残にも後塵を拝することになってしまったのだろうか――。

ナイキが厚底シューズの第一弾を出した2016年から、その性能に着目していたインソール技術者・冨永琢也氏がナイキの厚底シューズと新作「アルファフライ」を専門家の視点から【前後編】で完全解説する。

 

インソールは足裏形状に合わせて作るものではない

私自身について、少しご説明しておこうと思います。私は理学療法士として8年間病院勤務をしながら、予防医学、運動力学の研究を続け、インソールを製作してきました。

実は、日本は世界の中で非常に進んだ技術を持つ「インソールの技術大国」なのです。世界のインソールのほとんどは、未だ足の裏の形を計測し、その足裏形状に合わせた、言わば足を固定してしまうインソールを作っています。そうした製法では動くことを大前提とする体に悪影響が出ることが日本では30年も前から分かっていました。