早期退職・再就職で「社名と肩書き」にこだわって失敗する会社員が続出中

もうそういう時代じゃありません
前川 孝雄 プロフィール

娘の結婚式で「会社名」を言いたがために

次のような笑えないエピソードがある。大手に勤務していた 50代の社員が、一般的には名前を知られていない企業への出向を言い渡されたときのこと。彼はちょうど娘の結婚式を目前に控えており、「せめて、結婚式が終わるまでは今の会社に在籍させてほしい。今の肩書きで出席したいから」と会社に懇願したそうだ。バブル入社世代の私たちにとっては、その気持ちが想像できるだけに胸が痛む話だ。

だが、この話を若者にすると、きょとんとした顔で、「そんなことが子どもの結婚式に関係あるんですか。父親の社名や肩書きなんて誰が気にするんですか」という答えが返ってくる。これが時代の変化であり、現実なのだ。

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ひと昔前から、アメリカでは優秀な若者ほどスタートアップ企業に就職し、優秀ではない若者ほど大企業で働くと言われていたが、今は日本もアメリカのように変わってきている。日本でも優秀な若者ほどスタートアップ企業に人生を懸けるようになっている。また社会起業家を目指す若者も増えている。なぜだろうか。

一つには、若者ほど社会課題に関心が強くなってきており、そこへの貢献欲求が強くなってきていることが挙げられる。スウェーデンの 17 歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんや香港の若者のデモがその代表例。貧困や環境破壊などの解決に立ち上がる社会起業家がもてはやされるようにもなってきており、「会社の中での職位よりも、社会やお客様のお役に立ちたい」というピュアな気持ちの現れともいえる。

SDG’sやESG投資も注目されるようになってきており、大企業がビジネスの論理で収益を上げた結果、環境破壊や社会的な格差を広げていることには厳しい目が向けられるようにも変わってきている。若者から始まったこの意識変化は社会の主流となりつつある。