新型コロナ危機で「封鎖」された武漢市、その壮絶すぎる3週間

中国・新型肺炎「現場」の今【前編】
ふるまい よしこ プロフィール

医療関係者の「足」になる人たち

いま、武漢で奮闘しているのは患者や家族、そして医療関係者だけではない。

1月23日から武漢市では新型肺炎コントロール指揮部の通告によって、市内外の公共交通がストップした。空港、鉄道駅のみならず、市内の公共バス、地下鉄、フェリー、長距離交通がストップし、またオンラインの配車予約サービスも通行禁止になり、タクシーもまたナンバープレートで奇数日、偶数日に分けて営業することになった。

地区ごとにだいたい3台から5台のタクシーが配備されている計算だが、医療関係者の通勤には足りていない。自転車に乗れない看護婦が朝5時に起き、徒歩3時間かけて病院に通勤したというケースもある。

武漢の医療関係者〔PHOTO〕Gettyimages
 

22歳の大学生、常安さんはその朝6時20分に目覚ましをかけておいたのに、目が醒めたら6時50分になっていた。7時に精神衛生センターに勤める看護婦を車で送っていくことになっている。スマホを開いてまずメッセージを送り、顔を洗うひまもなく家を飛び出した。

春節の大晦日、食事が終えてSNSを見ていた常さんは、ボランティアがマイカーで医療関係者を勤務先に送り届ける民間組織があることを知った。参加したいと両親に言ったところ大反対され、「お前がクビを突っ込むようなことじゃない。お前が感染したら我われはどうなるんだ?」と言われて抵抗できなかった。

しかし、こっそりその組織のSNSグループに参加してみた。そこにはボランティアの運転手と医療関係者が400人も集まり、助けを求めるメッセージが飛び交っていた。以前ギターを教えてもらっていた先生も参加していることに気づき声をかけると、「さすがは俺の弟子だ」と喜んでくれた。