アイデンティティとは何か、が今でもテーマ

――私は当時アメリカにいたので実際にJ・Tを何度かテレビで見ましたが、J・Tはあるときはとても不安そうに、あるときはとても自信たっぷりに見えました。

サヴァンナ:それはまさに、そのときの私の精神状態を指していますね(笑)。バレたらどうしようと心配で仕方がないときもあれば、J・Tになりきって楽しんでいたときもあったり。

『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』より

――サヴァンナさんがJ・Tに、ローラがJ・Tの英国人マネージャーであるスピーディというキャラクターになりすましていましたが、ローラもサヴァンナも、どんどん架空のアバターに自分たちが乗っ取られていく様子が映画の中で描かれています。サヴァンナさんは自分が一生J・Tでいることになるかもしれない恐怖は感じませんでしたか?

サヴァンナ:う~ん。漠然と、いつか終わりがくる、と感じていたような気がします。むしろ、バレることに対する不安の方が大きかったかもしれません。とにかく当時の私はあらゆる感情に襲われていて、真実が明るみに出たときは正直ホッとしましたね。

『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』より

――本当はやめたいと思っていた?

サヴァンナ:不安に襲われながらも、不思議と、やめたいとは思いませんでした。18歳から25歳までJ・Tを演じたことは、私にとってはパフォーマンスのようなもので、そこに喜びを感じていました

いま、私は彫刻やパフォーミング・アート、執筆などの表現を生業としていますが、J・Tになりすましたことの経験が生きていると思います。私の表現のテーマは、真実、アイデンティティ、知覚とは何かを追い求めること。そして、状況や共同体の裏に潜む社会的規則や規範から開放されること。この2つは、この映画の中でも観客の皆さんに対して投げかけているテーマでもあります。