親の離婚、性的虐待に苦しんだローラ

――ローラさんとサヴァンナさんは、主従の関係ではなかった?

サヴァンナ:私とローラはそもそも義姉妹であり、親友同士でもある。たしかにローラはいろいろ指示を出しますが、ふたりは複雑なパワーバランスによって成り立っていました。「悪女 VS 聖女」でもなければ、「強者 VS 弱者」でもない。どちらが悪くてどちらが良いというわけでもない。言わば、「バディ」です。この映画はサヴァンナの視点から見た一連の経験を描いていますが、だからといって、ローラからの視点を否定しているわけでもないんです。

『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』より

――ローラさんの視点から描いたドキュメンタリー『作家、本当のJ.T.リロイ』(2016)がすでに存在していますが、それによると、彼女には子供の頃、親の離婚や性的虐待など辛い経験があり、ティーンエージャーの頃から、現実が辛くなると架空の自分を作り出すという習慣があったそうですね。サヴァンナさんも架空の自分をつくるような経験をしたことはありますか?

サヴァンナ:ないですね。私の場合は、ちょっとしたはずみでJ・Tになった、というのが正しいと思います。当時、私は18歳で、ファッションやアートに興味はあったけれど、まだ自分が何者なのかはっきり分かっていませんでした。だから、誰かになりすますことに抵抗がなかったのかもしれません。J・Tになりすますことには、ある種のスリルもありました。

「アメリカ文学史上最大のでっち上げ」と呼ばれることもありますが、壮大な野望があったわけではなく、ふざけて始めたことが雪だるま式に大きくなってしまったという感じです。