2000年、衝撃の自伝小説『サラ、神に背いた少年』が発表され、著者のJ・T・リロイは文学界にセンセーションを巻き起こした。翌年に発表された続編『サラ、いつわりの祈り』もベストセラーになり、ウィリアム・フォークナーやトルーマン・カポーティなどにも比肩する天才だと呼ばれた彼は、ウィノナ・ライダーやコートニー・ラブなどセレブが取り巻き、時代の寵児としてもてはやされた。

J・T・リロイ(写真右端)と“彼”を取り巻くセレブたち。リロイの後ろにはウィノナ・ライダーの姿も(2003年)〔PHOTO〕Getty Images

J・T・リロイは娼婦の母親と彼女の恋人から性的虐待を受け、ドラッグを与えられながら育ち、女装する男娼に身を落としてしまった18歳の金髪の美少年で、エイズの罹患者でもある――そんな彼の驚きの人生に世間は目をみはり、世界中のLGBTQから応援される存在となった。

ところが、である。2005年、J・T・リロイは架空の人物で、本当は2人の女性、ローラ・アルバートとサヴァンナ・クヌープだという真実を新聞がすっぱ抜く。J・T・リロイとして本を執筆したのはローラ・アルバートという中年の女性で、公に姿を現していたのは、ローラの義妹(夫の妹)であるサヴァンナ・クヌープという若い女性だったのだ。

アメリカ文学界最大のスキャンダルだと呼ばれたこの事件。その当事者であるサヴァンナ・クヌープの自伝を映画化した『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』が、2月14日より公開される。

サヴァンナをクリステン・スチュワート、ローラを『マリッジ・ストーリー』で本年度のアカデミー賞助演女優賞を受賞したローラ・ダーンが演じる話題作だ。なぜ、2人の女性はJ・T・リロイを創り出したのか――。実際の事件でJ・T・リロイになりすましていたサヴァンナ・クヌープさんに話を聞いた。