夫の親も「あなたが優しくなかったから」

「事件」から2ヵ月ほどが経ち、「離婚するならそろそろ親にも伝えないと」と志帆さんは、元夫の親に手紙を出した。そうしたら、すぐに電話がかかってきた。

「『バカ息子でごめんなさい』とか言ってもらえると思った私がバカでした。『志帆ちゃんがやさしくしてあげなかったからそうなったのでは』って言われて、もうびっくりしすぎて、はあーと力が抜けちゃった」

気を張って過ごした2ヵ月の疲れがドッと出た。闘い続けるのがいやになった。それで、いったん何もかもお休みすることに。

「証拠を集めるのも、弁護士に相談するのも、離婚について話し合うのも、今はナシ、ナシ。いずれ離婚はするけれど、とりあえず今は毎日、息子とただ笑って過ごすことだけを考えようと思ったんです」

子どもは1歳と少しで可愛い盛り。元夫は彼女と続いているようで、帰ってきたり来なかったりしていたが、もう志帆さんは気にしなかった。元夫がいてもいなくても、子どもとごはんを食べたり、遊んだりしながら、ニコニコしていた。家のなかの雰囲気はみるみる穏やかに。はじめは元夫と目も合わせなかったのが「パソコンがネットにつながらなくて」「じゃあ、見てやるよ」「わあ、助かる、ありがとう」くらいの会話が普通に交わせるまでになった。そのことに志帆さん自身、ホッとしていた。

「そうか、人を許すって自分を楽にすることなんだ

息子はとにかく可愛い。まずはふたりで楽しく生きよう。憎むことや恨みを晴らすことは横に置いて、子どもと楽しく生きることに集中したら、自然に許せるようになっていった(写真の人物は本文と関係ありません) Photo by iStock

もともと志帆さんと元夫は以前勤めていた会社の同僚で、「気の合う仲間」からの出発だった。仲よく3年付き合って、結婚。夫婦という関係でさえなければ、話は合う。

最終的には、「今晩、久しぶりに飲む?」「お、いいね」「最近、彼女とどうなのよ?」「実はけんかが増えちゃってさあ」とまで言い合える仲になっていた。