私たちの祖先が「命がけ」で海を越え、日本列島を目指した理由は?

3万年前の大航海、徹底再現で迫る!
海部 陽介 プロフィール

アジアでは後期旧石器時代の芸術的活動は低調に見えるが、皆無ではない。そして時代が下れば、中国の青銅器や日本の縄文土器のように、各地に独特で印象的な芸術的造形が現れる。

だからクロマニョン人と同時期のアジアに、ヨーロッパのような壮大な壁画や彫刻の証拠がないことを悲観することはない。

縄文土器 Photo by Getty Images

そもそも芸術だけが人間らしさではないのだから、もっと視野を広げて「人間らしさとは何か」という大きな問いに迫る研究はできないものかと、私は考えはじめた。

そのためにアジアは格好のフィールドに思える。広大で自然環境も多様なアジアに現れたホモ・サピエンスが、この地で原人や旧人と異なるどんな新奇的行動を見せたのか。

それを示せれば、私たちホモ・サピエンスがどのような人類なのかが浮き彫りになるだろう。

人類は大海原に出る

その中で、探るべきことはこれだと確信したのが、「人類の海への挑戦」である。人類が本格的に海に出はじめた古い証拠が、アジア大陸の東端に集中していることに気づいたのである。

 

それは芸術ではないが、芸術と同じように創造力を要し、さらに挑戦心がなくては達成できない、いかにも人間らしい行動といえるのではないだろうか。しかも、日本列島という自分の足元に、これまで見過ごされていた〝勇気ある挑戦〞の痕跡があることもわかってきた。

じつは日本列島は、人類最古段階での海洋進出の舞台の一つだった。しかも、そこにある海のいくつかはかなりの難関で、目標の島が見えないほど遠く、強大な海流が行く手を阻んでいた。

Photo by Getty Images

後期旧石器時代のホモ・サピエンスは、それを3万年以上も前に越え、日本上陸を果たしたのである。

いったいそれは、どのようにしてなされたのか。それは、どれほど難しい挑戦だったのか。そもそも祖先たちは、なぜ遠い島を目指したのか──。