私たちの祖先が「命がけ」で海を越え、日本列島を目指した理由は?

3万年前の大航海、徹底再現で迫る!
海部 陽介 プロフィール

ヨーロッパ各地を回れば、ほぼどこでもクロマニョン人の高度な芸術的文化を目の当たりにする。彼らの手で装飾された洞窟はフランスとスペインを中心に300以上も知られている。

彫刻や装飾品、縫い針なども数え切れないほど見つかっており、ドイツからは世界最古の彫刻と楽器(4万年前)が、チェコからは世界最古の焼土製の人形(2万8000年前)が発見されている。

クロマニョン人が残した彫刻のレプリカ Photo by Getty Images

クロマニョン人の文化の中には、すでに美術や音楽と呼ぶべきものが存在していたのだ。

アジアから「芸術」が出土しない

こうして知れば知るほど、まだ人類学の研究者になって間もない当時の私は、クロマニョン人と自分たち現代人の違いが、わからなくなっていった。それと同時に、大きな疑問が湧いてきた。

 

「同じ時期のアジアにもホモ・サピエンスがいたのに、なぜそちらには、爆発的な芸術的活動の痕跡がないのだろう……」

最近まで、アジアからは古い壁画は知られていなかった。ヨーロッパからの文化的影響があるとも言われていたシベリアを除けば、彫像の出土例はほぼ皆無である。

装飾品としてのビーズはないわけではないが、出土例は片手に収まる程度で、それが数え切れないほどあるヨーロッパと雲泥の差があった。どうもアジアには、芸術の心の痕跡のようなものが見つからない。それはどういうことなのだろう。

Photo by Getty Images

日本の学校で扱う世界史の教科書には、クロマニョン人のことは書かれていても、同時期の日本列島やアジア大陸にいた人類の文化については、ほとんど何も書かれていない。さして印象的な発見がないということなのだろうか。

つまり私たちアジア人は、「我々の祖先はヨーロッパのクロマニョン人より劣っていた」と認めなくてはならないのだろうか。

人類はみな「遠い兄弟姉妹」どうし

この謎を解くには、「ホモ・サピエンスのアフリカ起源説」を理解しておく必要がある。これは地球上のすべての現代人の起源と成りたちを説明する重要な理論で、簡単に言えば「ホモ・サピエンスは、アフリカで30万〜10万年前に出現し、その後、世界へ大拡散した」というものだ。

こういうと単純な話に聞こえるかもしれないが、内実はそうではない。