ゲノム編集「クリスパー」を癌の治療に応用したらどうなるか

最新臨床研究の成果が米サイエンス誌に
小林 雅一 プロフィール

米国の医療チームが、難治性の癌に対する免疫療法にゲノム編集技術「クリスパー・キャス9」を応用。その臨床研究の成果を、このほど米サイエンス誌に発表した。

https://science.sciencemag.org/content/early/2020/02/05/science.aba7365

この種の研究はこれまで中国で盛んに行われてきたが、肝心の科学的データが外部にほとんど明らかにされていない。信頼に足るデータが、世界的に権威ある学術誌に発表されるのは今回が初めてとみられている。

 

CAR-Tをゲノム編集で改良

今回の臨床研究を実施したのは、米国のペンシルベニア大学やスタンフォード大学をはじめ10校以上の大学からなる共同研究チーム。参加した研究者(主に医科学者)の総数は数十人に及ぶ、かなり大型のプロジェクトだ。

彼らが実施したのは、いわゆる「CAR-T」と呼ばれる免疫療法にゲノム編集の技術を加味することで改良した新たな治療法だ。CAR-Tは、白血球(免疫細胞)の一種である「T細胞」を遺伝子組み換え技術(従来型の遺伝子工学)で強化し、それによって癌細胞を攻撃して病気を治す医療技術だ。

〔PHOTO〕gettyimages

CAR-Tは最近、日本でも話題になった「キムリア」と呼ばれる超高額医薬品のベースとなっている技術でもある。キムリアはスイスの製薬会社「ノバルティス」が開発した遺伝子治療薬だが、「急性リンパ性白血病」などに絶大な効果を発揮する一方で、米国で47万5000ドル(約5000万円)、日本でも3300万円余りの薬価がつけられ物議を醸した。

このCAR-T技術をクリスパーで改良したところで、残念ながら高額医薬品の値段が下がるわけではない。ただ薬の適用範囲が広がるのではないかと期待されている。

これまでCAR-Tが効き目を見せたのは基本的に白血病に限られていた。しかし従来の遺伝子工学に代えて、クリスパーでT細胞をゲノム編集すれば、もっと広範囲の癌にCAR-Tが使えるようになるとみられている。

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