photo by iStock

今の日本、寅さんだったらどう思うか…日本人が怒らなくなった理由

平成時代の「暗黙のルール」
皆が知っている「男はつらいよ」、そのシリーズ最新作が昨年公開されました。渥美清演じる車寅次郎に、かつての日本人は羨ましさと共感を抱いていたのです。
しかし今の日本では、寅さんのように「怒る」ことは少なくなりました。それは戦争の教訓が廃れ、平成時代のある「暗黙のルール」が若者を支配しているからだと、菊池正史氏はいいます。
現代日本が思い出すべき、寅さんの「流儀」とは?

みんな、寅さんに憧れていた

去年、映画公開50周年を記念し、「男はつらいよ お帰り寅さん」が公開された。「寅さん」を演じた俳優・渥美清が96年に亡くなって、すでに四半世紀が過ぎようとしているが、久しぶりに話題となった。

 

ご存知だとは思うが、「寅さん」は映画シリーズが始まる前に、すでにテレビドラマとして人気があった。ところが、山田は半年間続いたドラマ版「男はつらいよ」を1969年3月に終わらせてしまった。奄美大島に行った「寅さん」がハブにかまれて死んでしまうという最後だった。

この手の人間はこの時代には生きていけないんですと。今や自由勝手気ままは許されないと、そういう窮屈な時代になって来たんだから、寅は死にます、みたいなことを言って、みんなに文句いわれながら殺しちゃった」(日本映画専門チャンネル2020年1月11日放送)

つまり、60年代から70年代にかけて、まだまだ古きよき時代の名残漂う「寅さん」の時代にも、すでに管理社会の「窮屈さ」が忍び寄っていたということだろう。それを山田は敏感に感じ取ったからこそ、「寅さん」を一度、殺してしまったのだ。

しかし、それは透徹過ぎる深読みであって、当時の大多数の人々は、まだ、「寅さん」の自由奔放な生き方、正直さ、悲しさ、人間臭さを許した。むしろ憧れていたのだ。

テレビ局には苦情が殺到し、山田自身も、社会が「寅さん」を求めていたことを理解せずに、殺してしまったことを反省したそうだ。そして映画化に乗り出し大ヒット。国民的人気シリーズとなった。

「許せんバカ者」への怒り

映画の第2作で俳優・東野栄次郎が演じた「寅さん」の恩師、「坪内散歩」がこう語る一幕がある。

「お前なんかより少し頭がいいばっかりに、お前なんかの何倍もの悪いことをするやつが、うじゃうじゃいることだ。こいつは許せん!実に許せんバカ者どもだ!」