【秘話】野村克也さんが「沙知代さんの墓前」で語っていたこと

迎えに来るのは少しだけ待ってくれよ
現代ビジネス編集部

俺だけ生きてていいのかな

――沙知代さんが亡くなられて1年3ヵ月ほどが経ちましたが、いま伝えたいことはありますか。

いまなにを言ってもすべて手遅れ。すぐ逝くぞって、それだけ。自分は好きな野球で生きてきて、何の悔いもないんですけど、女房は果たして「わが人生に悔いはなし」と思ってくれてたのかな。

あとは俺を迎えに来るのは少し遅くしてくれって、言いたい。もうちょっと生きたいね。やることはすべてやって、なにかやりたいことがあるわけじゃないけど、平均寿命よりはちょっと長生きしたい。この2~3年の間に同級生や一緒に野球をやった連中が5~6人死んじゃった。

バッテリーを組んだ杉浦忠とか皆川睦雄とか、同い年だけど逝っちゃった。長いことキャッチャーをやってきたけど、本当に俺に感謝して「ありがとう。ノムやんのおかげだ」って言ってくれたのは、皆川だけだったなあ。俺だけ生きてていいのかなと思ってしまう。俺の順番もすぐそこまで来てるんだよ。

 

――克也さんにとって理想の夫婦とは。

「女性優位の国は栄える」っていう格言通り。日本がこんなに発展したのも、戦争に負けてからだもんね。俺は3つの時に父親が戦死して、ほとんど記憶がないんだけれども、母親からは話は聞いていた。母は明治の生まれで天下はすべて夫に譲るという時代だった。いまは逆になったね。でも、そっちのほうが良いと思うんだ。家庭でもなんでも奥さんに天下を取らせたほうがいいの。

大企業の社長クラスの知り合いが何人かいるんだけれども、共通しているのはみんな奥さんが強いということ。ある社長の奥さんなんか、旦那が喋りだすと、横で「黙ってなさい!」って喋りを止めちゃうんだよ。で、帰りに玄関でその社長が俺の耳元で囁くんだ、「野村くん、今度は男だけでね」って。