さらば「陸の王者」! 元国鉄マンの大学教授が鉄道に引導を渡す理由

心折れる満員電車に終止符を――!
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それは、「大都市への人口集中」です。日本には、東京・大阪・名古屋の3大都市圏のほか、北は札幌から南は福岡まで数多くの大都市が存在し、そこに人口が集中しています。

そのため、前述したような理由から、国民の大半は好むと好まざるとに関わらず、日常の移動(特に通勤)に鉄道を使わざるを得ません。

通勤中の様子 Photo by iStock

くわえて日本では、幅わずか数十キロ、長さ500キロの「東海道」という帯状地帯に3大都市を中心とする都市が数珠つなぎとなり、世界に類をみない産業・人口集積地を形成しています。

そのため、容量に限界がある飛行機では運びきれない大量の「都市間中長距離移動ニーズ」が存在するのです。

 

こうした背景から、日本には、世界屈指の大輸送量を誇る鉄道輸送市場が3つ存在します。首都圏・関西圏の都市圏内輸送、そして東海道新幹線を利用した都市間輸送です。

その輸送量を、データを使って見てみましょう。

人口集中が生んだ偏り

交通機関の輸送量を示す重要な指標に「輸送人キロ」があります。これは、運んだ旅客数(人)にそれぞれが乗車した距離(キロ)を乗じたものの累積を指します。

日本の「鉄道輸送人キロ」は、現在、1年間に約4000億人キロ(うちJRは約2500億人キロ、JR以外が約1500億人キロ)です。

図1は、2012年度の日本の全鉄道輸送量(億人キロ)と営業キロのシェアを、JR3大市場(首都圏・関西圏・東海道新幹線)、大手私鉄15社、地下鉄と「その他」に分けて表示したものです。

図1:鉄道輸送量と営業キロの内訳

これを見ると、営業キロでは全体の4分の1を占めるに過ぎない5つのカテゴリーが、輸送量では約8割のシェアを占めていることがわかります(なお、大手私鉄に含まれることの多い東京メトロは「地下鉄」として計上しています。地下鉄輸送量の半分は東京メトロが占めています)。

つぎに、輸送効率を測る指標「輸送密度」の面から見てみましょう。

輸送密度とは、その路線を走る列車に乗って通過する利用者が何人いるかを示す値で、「鉄道の事業性を理解するカギ」とも言える指標です。「1日あたり輸送密度1000人」といえば、1日の上り下り列車両方合わせて、路線平均で1000人の利用者が乗っていることを意味します。

図2は、市場カテゴリー別に輸送密度を比較したグラフです。

図2:市場別旅客輸送密度比較

これを見ても、日本の旅客鉄道需要が、いかに首都圏、関西圏、東海道に集中しているかがわかるでしょう。

逆に言えば、それほど人口が集中していない地域では輸送量・輸送密度とも低く、東海道以外すべての新幹線を含み日本の鉄道営業キロの4分の3を占める「その他」の輸送密度は1万人程度にとどまっています。

言うまでもなく、鉄道の最大の特性は「大量輸送」です。したがって、人口減少社会では、鉄道が活躍できるすき間はしだいに狭まっていきます。今まで鉄道がその特性を発揮できた場所でも、鉄道以外の輸送手段に任せて撤退するほうが社会的に望ましいケースは確実に増えていくのです。

東海道新幹線建設に従事し、昭和40年代には国鉄の最高幹部の1人であった角本良平監査委員は、1968年に公刊した『鉄道と自動車』のなかで、すでにこう述べています。