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さらば「陸の王者」! 元国鉄マンの大学教授が鉄道に引導を渡す理由

心折れる満員電車に終止符を――!
2020年は高輪ゲートウェイ駅の開業やオリンピックの時の輸送計画など、鉄道に関する話題が盛りだくさんです。一方、満員電車や遅延といった鉄道の輸送システムへの不満も毎日のように耳にします。

これから「鉄道」はどうなるのか? 代替手段はあるのか? かつて国鉄の分割・民営化を現場で経験した青山学院大学大学院国際マネジメント研究科の福井義高教授にうかがいました。

鉄道は自動車と飛行機の“すき間産業”

モータリゼーションが米国以外でも顕著となった20世紀後半には“滅び行く19世紀の遺物”とすら言われた鉄道の将来は、今世紀に入って思わぬ好転を迎えたように見えます。

こうした動きを背景に、最近では「鉄道復権論」「鉄道復活論」を耳にすることも多くなってきました。

 

しかし私は、こうした“鉄道バラ色論”は幻想にすぎないと考えています。

人口減少時代を迎えて輸送量が減少し、縮小を余儀なくされる鉄道には、日本の高度経済成長を支えた“往年の陸の王者”として、静かな余生を過ごしてほしいと思っているのです。

今後の鉄道のあり方について考えるとき、まず私たちは、「鉄道は“すき間産業”である」という現実を直視しなければなりません。ここでは、皆さんにも身近な旅客輸送について、鉄道と、自動車や飛行機といったそれ以外の輸送手段とを比較しながら考えてみましょう。

まず、比較的近距離を移動する際の利便性において、鉄道は、自宅やオフィスから目的地まで運んでくれる自動車にはかないません。

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大都市の通勤で、おもに鉄道(やバス)が使われているのは、大多数の人にとって代替手段のコスト(駐車場代、タクシー代など)が高すぎるためです。

だからこそ、土地の値段が安く駐車場が(ほとんど)タダで使えるようなところでは、自動車通勤が当たり前になっています。大都市においても、コストを負担することのできる少数の人は、鉄道ではなく自動車を使って通勤しています。鉄道会社ですら、社長などの最高幹部は運転手つきの社用車で通勤しているのです。

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多くの利用者は好んで鉄道を利用しているのではありません。「移動するという目的」のため、コストとの兼ね合いで「やむを得ず鉄道を選択している」にすぎないのです。

また、遠距離移動の際のスピードにおいては、飛行機に太刀打ちできません。

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空港から都市中心部へのアクセスの利便性にもよりますが、鉄道で3時間以上かかる数百キロ以上を移動しようとする場合は、鉄道大国日本においても、飛行機が第一の選択肢です。

現在、新幹線列車で最も移動距離が長く(1200km)、時間がかかる(5時間)のは、東京~博多間の「のぞみ」です。しかし、東京~博多間の移動で新幹線を使う人の割合は1割未満。つまり9割以上の人が飛行機を利用しているのです。

新幹線「のぞみ」 Photo by iStock

便利さでは自動車に負け、スピードでは飛行機にかなわない……そんな鉄道が生き残っていくためには、自動車と飛行機のすき間に活路を見出すしかありません。ただし、すき間であるからといって、その規模が小さいとは限りません。

利用者にとってはやむを得ない選択であったとしても、鉄道事業者にとって有利な条件があれば、鉄道のシェアは「すき間」という言葉がふさわしくないような大きさになります。

そして、旅客鉄道の分野において、その条件が成立している世界でも数少ない国、それが日本なのです。

日本特有の条件とは?

では、日本に特有の“鉄道旅客輸送に有利な条件”とは、いったい何でしょうか?