米大統領選史上最悪のミス!? アイオワ大混乱の現場で何があったか

ルポ 2020年米大統領選
渡辺 将人 プロフィール

党員集会のキャプテンが使うスマホのアプリ自体は2016年にも導入されていたもので、今年からではない。2016年にはアプリが最大の関心事で神経質なほど細かい指導で問題は起きなかった。今年はアプリの指導まで手が回らなかった。

ダウンロードの準備が2週間前にようやく整ったことが不吉な兆候だった。アイオワシティの党委員が告白する。

「ダウンロードできないという苦情が多く寄せられた。ダウンロード過程で最初に届くメールがスパムに見えた。パスワードを変えなければいけないとか、それこそプーチンがロシアから送りつけているメールじゃないかと、ダウンロードを怖がる人が続出した。しかたないので、私はボランティアのキャプテンたちに党員集会4日前の木曜日に、集計は電話で報告すればいいからと伝えた」

ただ3つの数字を入れて送るだけのアプリともいえない単純なものだが、かなりの数のキャプテンがアプリのダウンロードと使用を放棄して電話に切り替えたのだ。何ヵ所かの投票区の結果をとりまとめて本部への連絡を束ねる努力もしたが、それでも回線がパンクした。

 

素人集団の手探り

アメリカの予備選挙は政党が呼びかけて集める市民のボランティアだけで行われる。選挙管理委員会のような役所がやっているわけではなく、党の常勤職員がやるわけでもない。党員集会の司会も集計もすべて近隣の住民、素人集団で手探りでやる伝統で、この手のロジには限界がある。

2008年から両党で党員集会を観察してきたが、今回は現場の集計にも異様に時間がかかった。

プレファレンスカードの使い方が分からない参加者が、1回目投票で第2希望まで書いてしまった問題が起きた。1回目の結果を見てから、2回目にどうするかを決める欄なのでこれでは無効だ。キャプテン達は、第2希望を書いてしまった陣営の参加者に訂正させるのに膨大な時間を要した。

筆者のいた会場ではサンダースとウォーレンが1回目に15%越えで有効になり、ブデジェッジは5票、アンドリュー・ヤンが17票、有効に足りなかった。ブデジェッジ陣営はルールを把握していて全員を足留めして5人を他から必死に勧誘した。

ヤン陣営はルールを理解しておらず、第1希望と第2希望が書かれたカードを回収して支持者を帰宅させてしまった。ルールを知っていればヤンも代議員を獲得できたかもしれなかったが、すべて無効になった。ヤン陣営リーダーが司会のキャプテンに泣きつく一幕があった。

候補者陣営にも責任はある。党員集会の方法を教えて、支持者を誘導するのは陣営のフィールドスタッフの仕事だからだ。

ヤン陣営は2回目投票のアイオワのシステムに無知過ぎた(ヤンはニューハンプシャーで撤退)。全体で80人ぐらいが2回目の権利を棄てて、しかもアンコミット(支持者なし)に丸もせず、帰ってしまった。