米大統領選史上最悪のミス!? アイオワ大混乱の現場で何があったか

ルポ 2020年米大統領選
渡辺 将人 プロフィール

メディアの「怨念」

メディアにとって選挙当日のうちに結果を速報できないことは不満の種だ。結果さえ出てしまえば報道はできる。その後、順位がひっくり返ろうと(2012年)、内輪揉めが始まろうと(2016年)、それらはむしろネタだ。

しかし、党側が結果を示さないと番組が成立しない。選挙特番は「当確」のCGを用意し、コメンテーターは勝敗理由のコメントを用意し、そのように台本が構成されている。それを見事に台無しにされたのだ。新聞も翌朝の朝刊に結果が間に合わなかった。

地元紙「デモイン・レジスター」が2月1日公表予定だった世論調査を差し止めた事件も関係している。同紙調査は確度の高さで有名で、メディアはこの世論調査をもとに特番や紙面をだいたい予想しておく。これが出口調査のようなものだった。しかし、一部調査員がブデジェッジの名前を外していたことが明らかになり、ブデジェッジ陣営の抗議で調査結果がお蔵入りになった。

これで2020年は誰が首位なのか皆目検討がつかなくなり、米メディアは右往左往した。当日夜のスタジオは材料枯渇のまま、「未だに結果が出ません」とアイオワへの不満を延々と放送し続けた。

メディアにとって何が優先かが理解できていなかったアイオワ民主党の広報マインドは疑われてしかるべきだ。

だが、特番や翌朝の朝刊を台無しにされたメディア側の怨念とは別に、コメンテーターは意外にも批判派と擁護派に割れた。

 

政治学者の見解

先の論考でも述べたように、アメリカの政治学者でアイオワを擁護するのは半数以下だ。人種的、産業的偏りがある州が過大な影響を持ち過ぎている。

だが、有権者との草の根対話で関心事を肌で感じる機会を与えて「候補者を教育する」には、CMなどの空中戦傾斜になる人口や面積の大きな州は好ましくなく中西部のアイオワ程度が適正サイズで、リベラルと保守もほどよく存在している、という擁護論もある。

ニューハンプシャー、ネバダ、サウスカロライナまでの4州を入れるとほぼ均衡がとれているというのも古くからある擁護論だ。

ただ、途中で脱落候補が出ることを考えると、この主張を正当化するには4州が終わるまでは、全候補に党が資金を提供してでも撤退を禁じる必要があるが、現実はそうはなっていない。

結局のところメディアは即時に開票結果が出やすい予備選方式を好む。党員集会はまどろっこしいし、ルール変更が複雑で、アメリカでも各州の党委員、地元紙記者、予備選専門の政治学者しか正確に把握していないからだ。

米大手メディアは地方ルールが支配する予備選報道に弱い。これはFOX NewsでもCNNでも同じだ。