「夢の若返り薬」 今井ワシントン大学教授の「研究の大成果と素顔」

世界が注視する「抗老化」最先端研究(2)
木野 活明 プロフィール

今井教授は、さらにこう続ける。
「ヘテロクロマチン•アイランドの情報をパックしたり解いたりする情報の制御に重要な関わりを持つ、老化の大元の制御因子としてサーチュインが候補となる、と論文に書いたんです。当時は、サーチュインという名称はありませんでしたが」

サーチュイン遺伝子は、長寿遺伝子とも呼ばれている。サーチュイン遺伝子の活性化により、生物の老化が遅れ寿命が延びるとして、メディアでも大きく取り上げられるようになった。サーチュイン遺伝子の活性化により合成されるたんぱく質サーチュインが、抗老化の重要な役割を果たす。

現在、今井教授のこのヘテロクロマチン•アイランド仮説は、老化のメカニズムの一つとして正しい理論であると学界で評価されているが、20年以上前にはほとんど理解されることはなかった。

 

研究のため渡米。自由な雰囲気の中で「大発見」

その後、研究の場を慶応義塾大学からアメリカに移した(1997年)。ヘテロクロマチン•アイランド仮説とよく似た仮説を酵母で立てていたマサチューセッツ工科大学(MIT)のレオナルド•ギャランテ教授に誘われ、渡米したのだ。

そこで生物にとって必要不可欠なサーチュインの「NAD依存性脱アセチル化酵素」の働きを発見し、世界の研究者に衝撃を走らせたのだ。米国に渡り3年後のことだった。
「1999年10月18日月曜日。その日はいまでも記念の日なんです」と、大発見をしたその時の昂ぶりのままこう話してくれる。

「それまで世界の研究者の誰もが気が付かなかったサーチュインの働きと、その老化における重要性を発見したんです。細胞のエネルギー代謝を反映するNADが、サーチュインを介して遺伝情報の変換を促していることを突き止めた。

NADが老化と寿命の制御に必要不可欠な役割をしていることが分かったことで、ヘテロクロマチン•アイランド仮説の証明にかなり近づいたわけです。この発見をきっかけに、NADを追っていけば個体の老化を理解出来ると思ったんです。私はNADをエネルギーの通貨と呼んでいます」

マウスでの実験。毛並みのツヤなど抗老化の理解結果は顕著
NADは、ニコチナミド・アデシン・ジヌクレオチドの略。今井教授によると、生物は各臓器がエネルギーを使う時に必要な「通貨」のようなものだという。

大発見の翌年2000年に、科学専門誌『ネイチャー』にその成果を発表。世界の研究者の度肝を抜くこととなった。

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