photo by iStock

「夢の若返り薬」 今井ワシントン大学教授の「研究の大成果と素顔」

世界が注視する「抗老化」最先端研究(2)

世界最先端の”夢の若返り”酵素発見までの 33年間

「長寿」は、古くから人類にとって永遠のテーマといっていい。

紀元前3世紀、秦の始皇帝は「不老不死の霊薬」を求めて配下の徐福を東方に向かわせたという。日本には各地にこの徐福伝説が残るが、21世紀の現代、一人の日本人研究者が抗老化(アンチエイジング)の分野で世界の熱い視線を浴びている。

“夢の若返り”が期待される酵素の作用について画期的な研究成果を発表したのは、ワシントン大学医学部(米・ミズーリ州セントルイス)教授の今井眞一郎氏(55)だ。

超高齢化社会を迎えた日本国内での反響は特に大きく、各テレビ局や朝日新聞の一面でも大々的に取り上げられ、研究者だけでなく世間の関心も非常に高い。そもそも、老化とは何なのか。アメリカから帰国中の今井教授が、最先端の「長寿研究」についてインタビューに答えた。その第2回目である。

 

今井教授は1964年、東京生まれ。中等部、高校と慶応で、そのまま慶応義塾大学医学部に進んだ。

今井教授は「老化の研究」を1987年にスタートして今年で33年になる。原点となるのが、慶応義塾大学医学部微生物教室に在籍中に始めた「細胞レベルでの老化研究」だ。そのまま大学院に進み10年間日本で研究を続けた。

今井教授は抗老化研究のパイオニア

「日本では当時、老化、寿命の根本的な理解を目指した研究がまったく行われておらず、現在もそうですが、研究者がほぼ皆無の状態でした。私は「細胞老化」と呼ばれる現象を解析することによって、個体の老化につながる原理を導き出そうと考え研究を重ねていました」(今井教授)

この細胞老化の解析から今井教授が導き出した仮説が、1998年に北野宏明氏とともに発表した「ヘテロクロマチン•アイランド仮説」だ。

北野宏明氏:システムバイオロジーの分野の創始者の一人。ソニーコンピューターサイエンス研究所の所長。ソニー執行役員を務めている。

DNAはクロマチンという構造に圧縮され、それが開いて情報を公開する形になったり、閉じて情報を読み取らせないようにしているという。今井教授がこう解説する。

「ヘテロクロマチン•アイランド仮説というのは、本来DNAの中にある老化につながる情報を読み取らせないようにパックされている部分が細胞の中で徐々に解けて、本来なら読み取られてはいけない情報が読み取られるようになり老化が起きるという、老化の本質を遺伝情報の制御に結び付けた仮説でした」