「左翼/右翼」の意味をはじめて知った学生と考える「政治意識」のこと

フランスと日本の狭間で
西山 雄二 プロフィール

授業の事前課題資料として、國分功一郎「パリのデモから」(『民主主義を直感するために』晶文社、2016年、所収)を読んで、実際のデモのイメージをつかんでもらう。この論考では、パリのデモの実態が現場の目線から語られ、多種多様な参加者が異なる立場と感性で気軽に集っている様子がわかる。

明確な政治的出張をもって団結するのではなく、統制不能にみえる群衆が路上に現れているという端的な事実が重要なのだ。私自身、國分さんと同じ時期にパリに留学していたので、同じ時代経験と価値観が共有されている文章だ。

 

フランスの「市民教育」

では、フランスのこうした政治意識はどのように涵養されるのだろうか。フランスでは中学・高校で「市民教育」の授業が週に一回実施されている。フランス共和国の理念「自由・平等・博愛」を軸として、法の下での個人の自由の意味、貧困などの社会的不平等の問題、民主主義を実現するための社会的連帯の意義などが議論される。

デモの具体例が掲載されている教科書もある。たとえば、社会保障改革に対する1995年の大規模ストライキについて、その経過説明と新聞記事の抜粋が示され、「なぜストライキが起こり、いかに解決するのか」「労働組合をはじめとして、どんな人々が運動に参加するのか」を学ぶのである。

フランスでは学生はもちろん、先生らも積極的に社会活動に参加する。2017年度、マクロン政権は大学入試改革に着手した。これまではバカロレア(大学入学資格)を取得すれば誰でも自分が望む大学に登録できる「平等な方式」が採用されていた。しかし、マクロン政権は大学側が公然と選抜をおこなう「学生の選抜」方式へ移行する案を示し、学生らはこれに猛反発した。

学生らは座り込みデモをし、授業や試験をボイコットし、約15もの大学で校舎が封鎖された。また、現在、フランスではマクロン政権による年金改革に対して激しい抗議活動が続けられている。2019年12月9日の大規模ストでは小学校教員の51%、中高校教員の42%が参加したとされる。フランスが必ずしも好ましい事例とは言わないが、授業では、日本と対極にみえる社会参加の現実を示すことは効果的である。