臨床試験でがんの新薬として残るのは、1/10000!

「抗がん剤をすることで死を早める」「先進国で抗がん剤を使っているのには日本だけ」といった噂は後を絶たない。だが、悪とされる抗がん剤などのがん治療薬が、標準治療として認可されるのには、効果や安全性などを確認する厳しい臨床試験が何重も行われているのだ。

『アライブ』第6話では、娘の治療で抗がん剤を拒否する父親が登場する。写真/フジテレビ

「がん治療に効果があるかもしれない薬剤や治療法が開発されると、細胞→動物実験で効果と安全性をみます。ここを通過した成分のみ、がん患者さんも参加する臨床試験へ進むことができます。この臨床試験にも3段階あり、第1相、第2相と勝ち抜いたわずかな治療法が、最終段階の第3相試験へ行きます。第1相、第2相試験はエビデンスレベルでいうと、レベル3となります。

第3相試験では、“ランダム化比較試験”といって、多くのがん患者さんを現在の標準治療を使う群(標準治療がない場合には、プラセボという偽薬が使われる)と、新薬を使う群の2つに分けて治療が行われます。ランダムに振り分けるので、患者さんも医師もどちらの薬になるのか選ぶことができません。そのほうが結果にバイアス(偏り)がかかるのを防ぐことができ、信頼性が高まるからです。長期の生存率まで調べて、効果が十分にあると証明されたものだけが、標準治療の仲間入りができるのです。第3相試験の結果、有効性が証明できなければ、先端医療と呼ばれるものであっても、研究段階の治療です」(勝俣医師)

新しい薬が標準治療になるまでには、がん治療薬の開発が盛んなアメリカでも、約15年。新規化合物が発見され、細胞実験、臨床試験を経て、標準治療になれる確率は、なんと1/10000! 動物実験が終了した段階で、非常に期待される治療薬であったとしても、臨床試験での成功率は、3~5%とされている。気の遠くなるような道のりがあるのだ。それも多くのがん患者が臨床試験に参加してくださったからこそ、効果の判定ができ、後に続くがん患者たちがその恩恵を標準治療として受けることができているのだ。それを知ると、とても尊い治療だということがわかるはずだ。

資料提供/勝俣範之医師