標準治療より最新、最先端がいいは、大きな誤解

「日本語だと“標準=普通”と解釈され、“最新”や“最先端”の治療のほうが上、と思う人もいますが、“標準治療”は世界が認めるスタンダードながんの治療法であり、標準=最高・最善で安心な治療という意味と思っていいでしょう。

前にも説明しましたが、がんの標準治療には、手術・放射線治療・薬物療法(これに最近は緩和ケアが加わる)があり、これらががん治療の第一選択であるべきですが、民間療法に走る人は途絶えません。それは標準治療がどんなレベルのものであるかが、多くの人に認識されていないことも原因のひとつかもしれません。特に、標準治療の抗がん剤には副作用がつきものですが、そのマイナス面ばかりが表立ち、不安を煽る情報が多い。私の診察でも、抗がん剤の治療を、と伝えると、ほぼ全員の方が“○○の民間療法ではだめですか?”と聞かれます。ですが、標準治療がどんなものであるかを丁寧にお話をすると、だいたいの方はわかってくださいます」(勝俣医師)

また、医療情報を語る際に、“エビデンス(科学的根拠)”という言葉がよく使われるが、エビデンスにもランクがあり、5段階の評価で分けられている。抗がん剤などを含む標準治療のほとんどは、ランダム化比較試験(従来の標準治療と新治療とをランダムに振り分けて予後を比較した臨床研究。第3相試験とも呼ばれる)で有効性が確認された最高の信頼度を示す“エビデンスレベル1”に相当する(下図)。

しかし、ニュースなどで「マウス実験でがんの最新治療法が~」と言われるものや、「○○医師が経験した〇〇の治療法が~」という内容は、レベル5と信頼度が最も低いエビデンスとなる。

「効果があったという1例の報告や医師の経験、動物実験での研究結果は、ともすると“最先端の治療である”などとメディアで紹介され、すぐにでも臨床応用できるような良い治療と誤解を受けてしまうことが多い」と勝俣医師。でも、これだけでは有効性の証明にはならない。1人の患者に効果があったからといって、他の患者に効果があるとは限らない。多くの患者さんでの再現性のデータも必要だ。

「最終的には、従来の標準治療との比較研究を行うこと、科学的、医学的に本当に有効かどうかと証明するためには、レベル1までのエビデンス、すなわち、ランダム化比較試験での結果をもってして、初めて科学的に有効だと言えるのです。レベル1のエビデンスが得られると、標準治療として、保険適用になるというわけです。最新、最先端の情報だといっても、それが有効であると安易に判断してはいけません。どれくらいのエビデンスレベルにあるのかどうかの吟味が必要です」(勝俣医師)

ちなみに、ネットや書籍などで見かける「○○でがんが消えた!」というがん患者にとって魅力的なキャッチフレーズの治療も、それが、きちんとした科学研究結果ではなく、個人の体験談の結果であったとしたら、エビデンスはレベル5になる。
 

資料提供:勝俣範之医師