ご存じですか?「チョコレート」を取り巻くおカネの“苦い現実”

「チョコカルテル」は成功するか
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

アフリカ生産国の「チョコレートカルテル」

コロンブスが最初にそれを口にして以来、チョコレートを生産するのが貧しい途上国で、消費するのが豊かな先進国、という格差の構図は現在まで変わっていない。

アフリカでカカオ豆を生産するのは、何百万人という零細な自作農だ。「フェアトレード」の2018年の調査によれば、コートジボワールの農家の6割は、一人当たり日収が1ドル以下という最貧困層に属する。彼らにとって、3ドルもするチョコレートは、簡単には手が届かない贅沢品だ。

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西アフリカでは貧困によって、200万人以上の子供達がカカオ豆農園で過酷な児童労働に駆り出されている。その子供達の殆どは、自分達が育てるカカオ豆から生まれるチョコレートの味を知らない。 

最近のカカオ豆の先物価格は2900ドル台まで急騰しているが、それでもインフレを調整すると90年代のピーク水準から実質的にはそれほど変わっていない。これは生産農家にとっては、肥料や農機具が値上がりする一方で所得が伸び悩んでいることを意味する。

また、生活に追われた農家が違法な森林伐採を行うことから、環境破壊の問題も深刻になっている。コートジボワールでは、かつて国土の4分の1を占めた熱帯雨林が、伐採によって4%にまで激減してしまっている。

 

こうした中、カカオ豆を巡って、今大きな変化が起きている。

最大の生産国であるコートジボワールとガーナが連携し、生産調整によって価格交渉力をつけようと、カルテルを形成したのだ。OPEC(国際石油輸出機構)ならぬCOPEC、あるいは「チョコペック」などと呼ばれている。 

「コモディティー」と呼ばれる農産物で、商品市場から生産国に価格主導権を取り戻そうという点で、画期的な出来事だ。でもOPECと違うのは、貧困農家の保護が主目的だという点である。

この2カ国は昨年6月、農家に対するトンあたり2600ドルの最低買取価格を世界のチョコレート企業に要求した。中国やインドなどの需要の高まりでココア豆の需給の先行きに逼迫感があることも、こうした動きを後押ししている。

結局、最低買取価格はグローバル企業の強い抵抗で頓挫したが、「チョコペック」は代わりに2020年―2021年分の農家への支払価格について、トンあたり400ドルの上乗せを勝ち取った。今年の10月から実施されるが、カカオ豆相場はすでにこうしたトレンドを読んで急騰している。

農家にとっては、少しばかりの生活の足しになるだろう。