コロナ「感染拡大のおそれはとても小さい」大御所がパニックを叱る!

過剰反応を広めた「2つの誤算」とは
山根 一眞 プロフィール

1990年代初頭から何度も意見を聞いてきた元・国立予防衛生研究所(現・国立感染症研究所)、呼吸器系ウイルス研究室長の根路銘(ねろめ)国昭さんだ。現在は生物資源研究所(沖縄県名護市)所長を務める。

根路銘国昭さん根路銘国昭さん。1939年、沖縄県生まれ、北海道大学大学院中退(獣医学博士)。スペイン風邪ウイルスのルーツを解明するなど、ウイルス研究の国際的第一人者。国立感染症研究所ウイルス第一部呼吸器系ウイルス研究室長、WHO(世界保健機関)インフルエンザ・呼吸器ウイルス協力センター長を歴任。ハーバード大学国際エイズ治療評価委員、中国河北省政府技術顧問など、世界を代表するウイルス研究者として多くの業績がある。2001年、出身地の沖縄で生物資源利用研究所を創立し、抗ウイルス作用をもつ植物の研究開発に取り組んでいる。『インフルエンザ大流行の謎』(NHKブックス)など著書多数。内外で発表した論文は約250件(写真提供:生物資源研究所)

根路銘さんは、WHO(世界保健機関)インフルエンザ・呼吸器ウイルス協力センター長として、ウイルスによる呼吸器感染症の拡大を防ぐ闘いを続けてきた経験もある。その一例が、1997年、香港で発生した新型インフルエンザ(鳥インフルエンザ)だ。

この年の5月、第一号の患者が死亡、ニワトリの市場で新型のインフルエンザウイルスが発見されたが、10月には勢いを増し18名の「ヒト」に感染、6名が死亡した(死亡率33%)。根路銘さんらWHOの専門家が、「全世界で2億人以上の死亡者が出る」と予測する危機だった。

そこで香港政庁(当時)は飼育中のニワトリ145万羽を一夜で殺傷処分する大英断に踏み切り、大流行を食い止めることに成功した。その殺処分を強硬に進言したのが根路銘さんだった。

鳥インフルエンザ鳥インフルエンザは各国でニワトリの殺処分による封じ込めが図られた(インドにて撮影) Photo by Getty Images

その根路銘さんはすでに80歳。話を聞くのは11年ぶりだったが、変わらぬかくしゃくたる口調で、怒りも込めて新型コロナウイルスの対応について語ってくれた。

初期対応、2つの大きな誤算

山根 新型コロナウイルス、現状をどう見ていますか?

 

根路銘 発生地の中国・武漢ではパニック状態となり、その過剰反応が世界に広がってしまったが、その責任は中国にあります。中国にはコロナウイルスによる呼吸器感染に対して認識深い人がいないからです。

2003年、同じコロナウイルスによるSARS(重症急性呼吸器症候群)の発生時、中国は患者発生数を減らした嘘の報告を行ったんです。それに対して諸外国から大きな批判を受けました。

今回、その汚点挽回を意識したのか、初動段階で、コロナウイルス由来ではない肺炎様患者をもコロナウイルス感染患者に含めて報告した可能性がある。この誤算の数字が雪だるま式にふくれ上がったと、私はみています。

山根 中国の対応の悪さがパニックを引き起こした?

根路銘 そうです。第二の大きな誤算は、コロナウイルスの感染者や肺炎患者を病院に集め隔離し、密閉した部屋に閉じ込めたことです。その密閉空間でさらに新しい患者を、いわばどんどん培養してしまったんです。

患者を収容した隔離病棟の窓を開けて、コロナウイルスを天空へ、「鬼は外!」と追い払っていたら、患者数の増加を防ぎ、減らすことができたはずなんです。「鬼は外!」については、後で話しましょう。