ご存じですか、日本のマンションを廃墟に追い込む「共有地の悲劇」

「性善説」の管理組合はもうもたない
大原 浩 プロフィール

理事長は素人である

あまり意識されることはないが、マンションと株式会社はよく似た仕組みである。

マンションでは、1棟のマンションを「区分所有」という形で各部屋ごとに別々の人々が所有するのに対して、株式会社では、1つの会社の所有権を「株式」という「区分所有権」に分割して大勢の人が所有する。

 

株式会社発展の初期には、大株主が経営者になることが多かった。いわゆるオーナー経営者で、自分が所有する会社を自分で経営するわけだ。マンションで言えば、1棟を所有するオーナーが賃貸経営を行う形に近い。

しかし、企業の巨大化と株式市場の発展によって「所有と経営の分離」が行われるようになると、業務に精通していない多数の一般株主が経営に直接関与することはほぼ不可能になる。そこで、「専門の経営者」を雇ってその経営者を株主総会などで管理していく形が一般化する。

実は、マンションの管理組合も「管理と所有」の分離の段階に来ているのではないだろうか?

1960年頃のように、緊密な地域社会はすでに崩れ、人の移動が頻繁に起こる。しかも、マンションが投資対象となり、所有者と居住者が違うことがごく普通になってきただけではない。外国人によるマンションの所有や居住も増えてきた。もちろんそれが悪いというわけではないが、文化も風習も価値観も違う人々を片手間(基本的に無給)の素人の理事長がまとめていくのは困難であるということである。

現在のマンション管理組合は、日本人の価値観が比較的均一で、何事も「話し合い」で解決するのが当然で、訴訟を起こすことを恥とさえ思っていた時代に登場した。だが、現在では「訴訟で物事を解決するのが当然」「自己主張は徹底的にする」という文化圏の人々もオーナーや居住者となる。もちろん、半世紀前とは日本人全体の意識も大幅に変わった。

つまり、現在のマンション管理組合は「時代遅れ」で制度疲労を起こしているから、早急に抜本的改革を行わないと、日本中のマンションがスラムになる恐れがあるということである。