ご存じですか、日本のマンションを廃墟に追い込む「共有地の悲劇」

「性善説」の管理組合はもうもたない
大原 浩 プロフィール

「共有地の悲劇」とは?

マンション管理組合の問題は、通常「共有地の悲劇」と呼ばれる現象と密接に関わる。読者に耳慣れない言葉かもしれないが、ジャレド・ダイアモンド氏の「文明崩壊」(草思社)において、文明崩壊につながることもある環境破壊の重要な原因として登場する。

〔photo〕iStock

例えば、村人達共有の放牧場(共有地)があったとしよう。

村人それぞれが所有する個人の牧場では特別な指示を与えなくても、翌年もさらにはその次の年も、果ては子供や孫の世代まで、豊かな牧草が生えるように努力するはずである。

ところが、共有地では、ほとんどの人はそのような行動はとらず、自分の牛にできる限りたくさんの牧草を食べさせようと共有地の草を奪い合うから、あっという間に荒れ地になってしまう。

 

少し変化球だが、投資の神様ウォーレン・バフェットの言葉にあるように「レンタカーを洗って返す人間はいない」ということだ。

大枚をはたいて購入した車であれば、日曜日ごとに、「洗車機では表面に傷がつくから」と言って手洗い洗車・ワックスがけを欠かさない人は珍しくはない。ところが、まったく同じ車種の自動車でも、レンタカーであれば、洗車機で洗う人さえいない。「共有」の自動車だからだ。

さらに押し進めれば、私が常々主張する「終身雇用の重要性」ともつながる、

より良い条件を求めて転職を繰り返している人々にとって、自分の働く会社とはまさにレンタカーである。洗って返すはずがない。

しかし、終身雇用制で働く人々にとっての会社はマイカーだ。日曜日ごとに手洗い洗車・ワックスがけをすることも十分あり得る。

企業経営者は、長期的視野で考えて、いったいどちらを社員として歓迎すべきなのか?答えは、11月20日の記事「日本企業はバカか…! いまこそ『終身雇用』が大切である決定的理由」で述べたとおりである。

村共同の牧草地は、自分だけのものではないから、将来のことなど考えずに放牧が行われ、最後は荒れ地になってしまう。同じことが、マンションにも起こりつつあるのだ。