戻ってきた彼、悪びれる様子はなく…
昼下がりのスタバはビジネスマンや暇を持て余しているであろう主婦たちで溢れており、レジには長蛇の列が出来ていた。
「ああ嫌だ。今日これから一人でどうしようかな……」スマホを出してシンガポールの観光情報を検索し始めると「お隣に座っていいですか?」と、突然とても美しい英語で話しかけられた。「さっきあなたが列に並んでいるのをずっと見ていました。良ければ少しお話しませんか?」
もしタイプでなければ、秒速でコーヒーを持ってすぐに席を立つ。でも、エリックよりも何十倍もタイプな男性の顔がすぐ目の前にあった。
「どこから来たの?仕事?旅行?」私たちは5分だけ他愛もない話をした。その男性は、爽やかな笑顔を見せながら私の電話番号を聞いてきたが、基本初対面の人に電話番号は教えたくない。
ちょっと仲良くなったくらいの段階でLINEだけなら仮に変な男性だった際にすぐブロックすることができるが、電話番号は調べようと思えば個人情報までも分かってしまうので、信頼関係がきちんとできた人でないと教える必要はないと思っている。
私が少しまごついていると、男性はLINEのIDを紙に書いて「いつでも連絡ください!」と私に渡し、颯爽と去っていった。
やがて、夕方になり、エリックがひょっこりとホテルへやってきた。ずっと放置していたことを悪びれる様子もなく、私が「今日誕生日なんだけど…」と言うと、『分かった!分かった!じゃあ今から特別な部屋を用意してあげる!』と、言いセントーサ島へと車で移動した。
カペラという、ラクジュアリーなリゾートホテルは確かに女性なら一度は泊まってみたいと思うシンガポールの素敵なホテルだ。
「さぁ火鍋を食べに行こう!僕の友達もみんな来るから」というと、カペラホテルからエリック行きつけの火鍋屋へとまた車で向かった。