米中覇権争いの中、イギリスが「大胆な外交戦略」を描く理由

ブレグジット後、一体どうなるのか?
笠原 敏彦 プロフィール

例えば、人民元の国際化が進む中で、金融街シティにはそのオフショア取引の拠点となるという期待がある。米中の対立が深まるほど、シティはこの分野でウォール街に対して優位性を高めるはずだ。

また、ファーウェイの市場参入容認という「経済政策と安全保障政策の断絶」について言えば、イギリスはすでにアメリカの反対を押し切り、国内の新規原発建設への中国企業の参入を認めてもいる。

「開かれた経済」という大原則の御旗の下に、すでに先鞭はつけられているのである。

 

冷徹に国益を見定め、柔軟に行動する

その一方で、イギリスは中国の海洋進出、軍事的台頭を睨んで、南シナ海でアメリカや日本と軍事演習・共同訓練を行い、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を遠路はるばる太平洋に派遣すると表明している。

中級国家の軍事戦略としては時代錯誤の感もするが、ブレグジット後の世界戦略の一環としてインド太平洋地域でのプレゼンス向上を狙ったものだという。

イギリスは対中政策で経済と軍事・安全保障を明確に分離する方針のようである。

筆者には、イギリスの米中認識は次のようなものではないかと思える。

アメリカにとっては、米中覇権争いという大状況下で、最大の同盟国であるイギリスを簡単に手放すわけにはいかない。

一方で中国にとっては、対米外交で独自性を発揮できるイギリスは欧州先進国に斬り込んでいくゲートウェーとして有用である。

イギリスを自陣営に惹きつけることはアメリカにとっても、中国にとっても、覇権争いの趨勢に影響を及ぼし得る問題だろう。

イギリスはある意味で「キャスティングボート」を握ったかのように、米中間の競争の狭間で冷徹に国益を見定め、柔軟に行動していこうとしているのかもしれない。

ブレグジット後の世界における地位と役割の模索を始めたイギリス。その姿は、かつての冷戦時代のように二つの陣営に分かれて争う世界ではなくなっていることを映し出しているようにも見える。

ふしぎなイギリス