「武漢肺炎」が迫りくる中で、どうしても思い起こさずにはいられないのは、2002年から始まったSARSの世界的感染である。
この時も大変な騒ぎで、中国大陸や香港に渡航するなどと言うのは一大事であった。仕事などで仕方なく渡航した人々は、同僚から遠巻きにされることを覚悟しなければならなかったのだ。
しかし、その後2008年の北京オリンピックまで中国経済が怒涛のごとく発展し、我が世の春を謳歌したことは、誰もが知る事実である。
投資の神様ウォーレン・バフェットも、2003年のSARS騒ぎがまだ収まらない早い時期に「生涯で初めての外国株への『本格的投資』」を行って、世間を驚かせた。
それまでも、試験的かつ少量の外国株投資は行っていたのだが、バフェットにすれば「お遊び」程度のものでしかなかった。
SARSが発生した時の共産主義中国は、2001年11月にWTOに加盟したばかりであった。1986年7月に前身であるGATTに申請をしてから、長年の紆余曲折を経ての加盟であり、ようやく世界貿易に本格的に乗り出そうというタイミングであったのだ。
その出鼻をくじかれた形であるが、経済が上り調子であったことと、WTOに加盟したばかりで、世界貿易・ビジネスの枠組みにまだ深く入り込んでいなかったことが助け舟になった。
実際、前述のバフェットは、追加投資も含めて、数倍に価格が上昇したペトロチャイナ株を2007年にすべて売り払って多額の収益をあげた。まさに、2月3日の記事「目先の株価にバタつくな!バフェットの神髄は『機が満ちるまで待て』」で述べた「バフェット流の真髄」である。
私もペトロチャイナ株では大きな恩恵を受けたが、バフェットの投資の詳細や売り払った事情(色々な憶測がある)については、「韓国企業はなぜ中国から夜逃げするのか」(講談社)などを参照いただきたい。
しかし、今回の「武漢肺炎」の騒動の中で、共産主義中国における2匹目のドジョウを狙えるであろうか?
学習効果があるはずにも関わらず、すでに死者・感染者数が、大本営発表ならぬ「共産党発表」でさえ、SARSを上回っているのは、憂慮すべき事態である。