40代の息子に小遣いを渡す70代の母

もちろん、母親の過干渉がそのままうつに直結するとは思わない。もしかしたら、女性の長男は相当なパワハラに遭っているのかもしれない。
ただ、それまで過干渉な子育てにほとんど危機感を持たなかった女性が、その点を反省していることは事実である。「今回は、干渉しないようにしようと思います」と神妙な声だった。

干渉しないようにしようと思います
どこかで聞いた。

昨年、過去に覚醒剤を使用した出所者やその家族らの話を聞く機会があった。その際、40代の息子が7回も刑務所へ入っては出てを繰り返しているという70代の母親が言った言葉である。

「息子は、いまだに罪の意識がありません。お金をせびってくると、ああ、クスリを買うのだろうなと思っても、ほかの人に借りて迷惑をかけるくらいならとつい渡してしまう」

自分が渡さなかったら誰かに借金するはず…そう思って渡してしまった Photo by iStock

息子は「容量を守っているから、体に悪くない。誰にも迷惑はかけていない」と話すそうだ。容量って? と尋ねると「疲れた週末にしか使わない。毎日使ってクスリ浸りになってるわけじゃないってことみたいで……。私が死んだらどうなるのか」と母親は申し訳なさそうに下を向く。

ほかの、息子が覚せい剤使用から立ち直り更生したという女性から「あなたが過干渉だからいけないのよ。食事の後片付けとか、洗濯くらい自分でやらせなさいよ。とにかく自立させないとダメよ」と叱られていた。

容量を守っていると言い張る息子の母親は「次に出たら(出所したら)、干渉しないようにします」と瞼にハンカチをあてながら小さくつぶやいた。

あの70代後半であろう女性の震える肩を思いだし、連絡をくれた冒頭の女性にそのことを話した。

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「子どもを信じる力」

「干渉しない」は単なる方法論だ。子どもをどんな方向に向かせたいかという理想像があったほうがいい、と話した。「大丈夫なの?」を封印しようということも伝えた。「じゃあ、大丈夫だよって言えばいいですね」と言われたが、「何も言わなくてもいいですよ」と話した。

信じてあげて。〇〇君(長男の名前)の生きる力を信じてあげようよ。お母さんが信じてあげることが、彼の力になるよ」
彼女はずっと泣いていた。
「私は信じてなかったんですね……」

体を鍛えるように、子どもを信じる力だって鍛えることができる。あえて何もしない、という子育てもある。彼女の悔いは、きっと長男に伝わるだろう。

口を出さず、やってあげず、見守ること。それは信じられないと難しい。自分の足で歩くことができるようになるために、「親がやってあげる」ことを少し我慢することが大切だ Photo by iStock