ジャーナリストの島沢優子さんは、教育の現場を長く取材してきた。スポーツ指導の場もしかりである。そうして自分たちが「された教育」だけではなく、正しい知識をもつことが重要だと心底感じるようになる。そんな「子どもが本当に伸びる子育て」を考える連載が「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」だ。

受験シーズンたけなわ、就活も始まっている。春は子どもがより「自分の進路」と向き合う季節だ。受験は希望通りにいき、就職もうまくいったある男性が、入社2年目でうつ病の診断をされた。心の病には様々な要因があるだろうが、その母親の子育てに別の親子との「共通点」が浮かぶ。

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入社2年目で鬱になった男性

取材をさせていただいた方が、数年経って連絡をくださることがある。
先日は、首都圏に住むある50代の女性から電話をもらった。
島沢さんに言われた通りになっちゃった。どうしたらいいでしょう?

聞けば、一昨年就職した長男が半年ほど会社を休んでいるという。入社2年目を迎えた昨春くらいから体調を崩し、夏過ぎからまったく行けなくなった。朝起きて、着替えて支度をするのだが、玄関で靴を履きドアノブに手をかけた途端にめまいや頭痛、吐き気に襲われてしまう。心療内科でうつと診断され、現在は2ヵ月に一度産業医と面談をしながら復帰時期を探っている最中だ。
ゲームソフトや食べ物を買いに行くといった外出はできるが、出勤がままならない。

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発端は何なのか。
人手不足と言われる昨今どの企業にもありがちだが、長男の会社も新人に仕事を教える余裕がないようだ。40代の上司は、入社一年目の長男には「なんでも聞いて」と言ってくれたらしいが、そのうち自分もいっぱいいっぱいになったようで「自分で考えてやってくれ」と言うようになった。

その後、つい質問したら「何度同じこと聞くんだよ! 自分でやれよ!」と怒鳴られた。そんなことが2、3度続いたのち、長男はうつを発症してしまった。
その上司に自ら解決策を持ちかけるといったことはハードルが高いかもしれないが、同僚や、違う上司に相談することもしていなかった