ヘイトの拡大を止める動きが弱い日本

また、私がもうひとつ懸念しているのは、日本ではこのような差別に反対する動きが弱い点だ。

日本では以前から、ネットを中心に中国や韓国など、日本周辺のアジア諸国に対する差別的な意識が見られるため、今回の感染拡大に際して中国人へのヘイトが拡大する恐れがあることはある程度予測できたことである。だが例えば、政治にしてもメディアにしても、ヘイトの拡大を防ぐような動きが活発だとは言い難く、逆に差別意識を助長するような報道も少なくないのが現状である。

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これまで紹介してきたように、欧州には人種差別が確かにある。だが同時に欧州では、フランスで「#私はウイルスではない」タグがトレンド入りしたように、差別をなくそうという強い動きもある。実際に今回の感染拡大に際しても、アジア人差別をやめるべきだと呼びかける報道はとても多い。欧州では、差別をなくしたいと考える人も差別的な人も、基本的に皆、社会への関心が高いという前提があるため、差別的な行動に対してそれを抑止する動きも強く起こるのだ。

一方日本では、選挙の投票率の低さが物語るように、社会への関心が全体としてとても低い。このような状態では、差別を強める動きに対する抑止力が足りず、何かのきっかけで社会全体が差別意識に飲みこまれる、そんな事態に陥る危険が高まってしまう。

前述のように私たち家族は差別用語を叫ばれ追いかけられるという恐怖を経験したが、同時に、私たち家族を助け気遣ってくれた人の存在に精神的にとても救われた。このように、差別がある社会を嘆き改善しようと考える人の存在は、差別の抑止に繋がるだけでなく、被差別側にとっても重要な意味を持つ。願わくば日本でも、今回の感染拡大に伴う中国人への不必要な攻撃を嘆く声が強まり、これ以上ヘイトの拡大が起こらないで欲しい。