差別用語を叫ばれ追いかけられる恐怖

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私たち家族は数年前、今と同じように外に出る事に怖さを覚える経験をした。その時期、アメリカでは大統領選でトランプ氏が勝利し、イギリスではEU離脱の国民選挙が行われ、私たちが住むオーストリアでも極右政党である自由党が躍進するなど、欧米を中心にポピュリズム(大衆迎合主義)が加速していた。

そんな中、当時オーストリアに引っ越して2年目だった私たち家族は、昼間の明るい時間帯に家の近くを散歩中、現地の若者に差別用語を叫ばれながら追いかけられたのだ。その際に助けてくれた地元の男性は「皆がこうだと思わないでくれ」と謝罪までしてくれたのだが、この時期のオーストリア国内の移民への排他的な空気はそれ以前と明らかに違っていた。

その後オーストリアでは、自由党議員による汚職事件の影響もあり、昨年行われた総選挙で自由党が大敗するなど、政治の変化と共に排他的な空気が薄まっていたのだが、今回のウイルスの感染拡大をきっかけに、今度は主にアジア人に対して社会の空気が変わりつつある

このように、欧州では政治の変化や今回のウイルスの感染拡大など、何かのきっかけによって差別的な空気が急速に高まるという現象がよく起こる。私は、このような現象は、昔日本で流行した「赤信号みんなで渡れば怖くない」という言葉のように、何かのきっかけが差別意識を内包する多くの人に同時に与えられることで、個々の差別へのハードル下がるといった、ある種の集団心理も作用したパニック現象だと考えている。