心の奥に潜む差別意識の解放か

なぜこのような不必要な攻撃が起こってしまうのか。その背景には、欧州にはびこる人種差別意識がある。

人類の歴史において人種差別は欧州に限らず様々な地域で古くから見られるが、欧州では、白人がその他の有色人種より優れているという白人至上主義に基づいた差別思想が、植民地主義と相まって19世紀後半から20世紀前半にかけて広く浸透した。

それから100年程が経った現在では、人種による優劣は生物学的にも進化学的にも否定されている。倫理的にも、人種やジェンダーなど何かの背景によって人を差別すべきではないという考え方にシフトしており、「差別」を表立って肯定する人はかなり少なくなっている。

ルーブル美術館の前でマスクをしているアジア系の親子〔PHOTO〕Getty Images

だが、現在はまだ差別のない未来に向かう変化の過渡期であり、「差別はダメという倫理観を持つべき」という表面的な理解にとどまり、自身の持つ差別意識をただ心の奥にしまっているだけの人も少なくないと考えられる。

このようにただしまってあるだけの差別意識は、冷静さを失う何かのきっかけが与えられれば簡単に顔を出してしまう。現代社会における差別には、人種にしてもジェンダーにしても、ふとした時に急に顔を出すこの種類のものがとても多いように思う。今回の欧州におけるアジア人に対する攻撃も、心の奥にしまってあった差別意識が、感染への恐怖をきっかけに表面化した結果だと考えられる。