内臓に直径30センチほどの円形の損傷ができている人がいた。最初、出血が激しく、今も体外へ出血が続いている。また、その出血のあたりには医者が切開し糸で縫った跡もある。
その人は夜中3時間おきにしか眠ることが許されず、日中は初めてやる作業をずっとしている。それは命を守るもので、全く目が離せない。時に乳腺が詰まり40度の高熱を出すこともある。自律神経が乱れることもあった。
その人の家には、時間を自由に使える、仕事を抱えていない状態の人がいた。その人は、その命を守るもう一人の責任者である。その人はその命を預かる仕事を1日2時間以内のみ担当したという――。
これは、「とるだけ育休」の状態を書いたものだ。
ママ向けアプリを利用する508人の母親に対し実施されたある調査※1によると、育休を取っている男性のおよそ3分の1が家事育児をする時間が2時間未満という結果になったそうだ。この状態を「とるだけ育休」と命名したそうで、たしかに「とるだけ」状態である。
もちろん、アンケートの結果なので属性によるバイアスは多少かかっているかもしれない。育休を取った後に病気になったなど、男性側も育児ができない理由を持つ人もいただろう。以下、そういった人以外のことを書きたいと思う。
ズタボロなのに休めない、産後の女性たち
冒頭に書いた通り、産後の女性の体はズタボロである。妊娠出産は病気じゃないから軽視されてしまうけれど、実際体を大怪我した状態であり、しっかりと休まなければいけない。でも、目の前には世話をしないと死んでしまう命があるから、休まずに動いてしまう。それを見た人は、「なんだ、動けるんだ」と思うかもしれない。
ズタボロ状態の女性に「母親だから」と家事育児を22時間してもらい、自分は2時間のみ担当する――これが現実にたくさんの家庭で行われていると思うと、とても悲しい。
自分のことを大切に思ってくれているはずのパートナーにそんなことをされたら傷つくし、自尊心も削がれるし、鬱々とするし、怒りも湧く。パートナーにとっても大切な子供のはずなのに、子供を守ろうとしない姿に心底幻滅する。そんな相手には大事な子供を任せられない、と味方ではなく敵のように感じてしまう。そしてその気持ちが回復することは本当に難しい。実際、それは女性から男性への“愛情曲線のグラフ”としてデータに表れている※2。
私は「産後の体は本当に大変だから、ほとんど寝ていて! 僕がやるから!」と育休を取得した男性が育児と家事を頑張っている姿も見てきた。友人の夫がそうだった。心底「素敵な人とパートナーになってよかったね」と友人を祝福したい気持ちになった。
でも、そうじゃない男性もいる。この違いはなんだろう?
※2「パパとママが描くみらい手帳」より