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世界の危機を深刻化させる「無邪気な冷笑家たち」その厄介な誇り

「何をやっても無駄」なのだろうか

「真の名」と「偽りの名」

魔力や特別なパワーを持つ者が出てくる欧米の神話やファンタジーでは「真の名」が非常に重要な意味を持つ。

「真の名」は本人の真相を表すものなので、他人に知られるとパワーを明け渡すことになる。だから力を持つ者は自分の真の名前を隠そうとするし、その者を打ち破るためには真の名を探らなければならない。

日本ではアーシュラ・K・ル=グインの『ゲド戦記』を通じて「真(まこと)の名」のコンセプトを知った人が多いのではないかと思うが、エジプト神話や古代ギリシア神話、そして聖書にも出てくる、古くからあるコンセプトなのだ。

たとえば、エジプト神話の女神イシスは、毒蛇を使った策略で太陽神ラーから真の名を聞き出して彼のパワーを支配し、息子のホルスに権力を与えた。

 

現在、アメリカや世界のほかの国々で起こっているのは、権力のある人びとが「偽りの名」を駆使して力のない人びとを弾圧し、腐敗をすすめていることだ。

彼らから力を奪い、私たちがパワーを持つためには、ものごとの「真の名」を見つけることから始めなければならない。現在起こっていることを誤魔化さず、見過ごさず、深く掘り下げることで真の名を見つけたら、それを堂々と使って社会を変える努力もしなければならない。

レベッカ・ソルニットが新刊『それを、真の名で呼ぶならば』で語っているのは、まさにこういったことである。この本は、「全米図書賞」という権威ある賞のノンフィクション部門の候補にもなったのだが、それは、アメリカが直面している危機を根本まで掘り下げているエッセイ集だからだ。