自衛隊の現役幹部、衝撃告白「災害支援隊になってゆく私たちの葛藤」

知られざる内外の懸念
松岡 久蔵 プロフィール

「例えば、陸自で最精鋭の第1空挺団(千葉県船橋市)が昨年、千葉県での豪雨被害を受けて、倒木を伐採するなどの支援活動をして話題になりました。一般社会から見れば『社会貢献活動に取り組んでいて偉い』というだけでしょうが、その間、彼らの訓練活動は中止されます。

いくら精鋭とはいっても、彼らは災害支援のプロフェッショナルではなく、その点では体力のある素人とさほど変わりません。もちろん災害支援も命令ですから、嫌な顔は見せないでしょうが、『最精鋭の部隊に配属になったのに、木を切らされるのか』と違和感を持った隊員も少なくないと聞きます。実は優秀な隊員ほど、自分の存在意義に疑問を抱き、除隊の道を選ぶ者も多いのが現状です」

 

「好感度」を手放せなくなった

こうした問題があることは、筆者も別件の取材を通して知っていた。以前執筆した「自衛隊員のメンタルもやられた豚コレラ『5万頭殺処分』の壮絶現場」では、自衛隊が豚コレラに感染した家畜豚のと殺処分に動員されていることを報じた。また捕鯨問題の取材では、鯨肉の消費が落ち込む中、ある自民党議員が「クジラの肉が余ったら自衛隊に食べさせればいい」と発言するのを聞いて、自衛隊が国から悪い意味で「便利屋」のように扱われていると感じたものだ。

とはいえ、災害支援による国民からの「好感度上昇」を今さら手放すわけにもいかない。陸自の別の中堅幹部が言う。

「自衛隊には、演習の騒音問題などで周辺住民との軋轢がつきものでしたが、災害派遣が広報されるようになってから、住民の対応も全く変わりました。『物騒な邪魔者』から『いざというときに頼りになる存在』になったというわけです。世論を味方につけ続けるためにも、災害支援はやめられなくなっている。

また、これは陸自特有の問題ですが、人口減の時代にあって、政府は陸自の隊員数を減らす方向で話を進めています。その中で、予算などの利権を維持するためにもなるべく組織の規模を維持したい陸自にとっては、災害支援はいわば渡りに舟だった。警察や消防の活動範囲に食い込めるのはそこしかなかったんです。警察は県境より外にはなかなか展開できない。消防は人員が限られている。その点、自衛隊は全国展開できますから、適任だと主張できた」

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