中国はアメリカに勝てるか…全世界から有能人材を集める最強国の力

アメリカは寛容性を失いかけている
野口 悠紀雄 プロフィール

ローマは非寛容になって衰退。アメリカや日本は?

古代ローマ帝国は寛容政策を積極的に進めることで繁栄した。しかし、いつまでもそうであったわけではない。

4世紀末ごろから、排他的感情がローマ帝国に急速に広がった。これによってローマは急速に変質し、そして崩壊したのである。

「同じことが、アメリカにも起きはしまいか?」

こうした懸念が広がりつつある。それは、トランプ大統領が人種的非寛容政策を進めつつあるからだ。

とりわけ、イスラム圏の人々を排除しようとする動きが顕著だ。
 
これまでアメリカのハイテク産業における外国人の就労は、制度的には「H-1Bビザ」によって支えられるところが大きかった。これは、特殊技能職に認められる就労ビザだ。

ところが、その発給が厳しくなってきているといわれる。H-1Bビザ発給の厳格化は、アメリカでの起業を目指すイスラム圏からの移民起業家を、大きく減らすのではないかと懸念されている。

 

排他政策が力を増すと、有能な人がアメリカに集まらなくなる危険がある。才能を持った多くの人々がアメリカに集積したことの効果は、きわめて大きかった。そのような集積効果が阻害されてしまえば、アメリカの基礎技術開発力の最も重要な部分が損害を受けることになる。

アメリカの新しい文化は、多様性の尊重の中から生まれてきた。そのような文化を否定することは、アメリカの社会の基本を否定することになる。これはアメリカにとって非常に深刻な事態だ。

チュアは、アメリカの寛容性を賞賛した後で、「今日のアメリカは、その寛容性を失いかけている」と言っている

以上で述べたことは、日本にとっても他人事ではない。

日本の経済成長率が低迷しているため、世界経済における日本の地位は低下している。しかし、所得面で競争できないとしても、住みやすく、働きやすい社会を作ることは可能だ。

それによって世界中から多くの有能な人々を招けるなら、日本の成長力もいずれは回復するだろう。夢のような話だと思われるだろうが、決して不可能なことではないはずだ。

ところが、日本は所得の面で魅力を失いつつあるにもかかわらず、移民を認めようとしない。これでは、回復の可能性は見いだしえない。

中国のミサイルに対抗することも必要だろう。しかし、それよりももっと重要なのは、有能な人々を全世界から惹きつけられる国を作ることだ。

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