中国はアメリカに勝てるか…全世界から有能人材を集める最強国の力

アメリカは寛容性を失いかけている
野口 悠紀雄 プロフィール

中国は変わりうるか?

ただし、以上で述べたことが、今後もいままでの形で続くとは限らない。チュアの本が書かれたのは2010年だ。その当時と現在では、状況が変わっている。

とくに重要と思われるのは、つぎの2つだ。

第1に、アメリカに留学した後、中国に帰国する人が増えていると言われる。帰国留学生たちは、「海外に出て成長して戻ってくる」ことから、「海亀族」と呼ばれる。 

中国が経済成長した結果、中国人留学生が中国に戻って、条件の良い就職先を見つけられるようになったのだろう。そうなれば、彼らが中国国内で能力を発揮できる機会は増える。それだけでなく、中国政府は優秀な人材を呼び戻そうと、留学生にとって魅力的な優遇策を講じているとも言われる。

 

チュアは、著書の中で、そうした変化が生じていることは認めつつ、つぎのように述べている。

「中国では各界の腐敗があまりに激しいために、人脈が成功をおさめるうえで決定的に重要であることに変わりはないままなのである。このシステムが変らないかぎり、中国のベスト・アンド・ブライテストは、中国に留まりたいとも、あるいは留学先から帰りたいとも思わないだろう。彼らは、より直接的に成功へと繋がるような社会へと移るはずである」

これは、説得的な議論だと思われる。ただし、事態が今後どう変化するか。まだ分からない面が多い。

もう1つの変化は、技術面にある。それは、AI(人工知能)とビッグデータの重要性が増したことだ。

これまでも述べてきたように、「AI時代には、体制の異なる中国という国家が、技術開発には有利なのではないか」という懸念が強まっているのだ。

個人情報も含まれるビックデータの収集に対して、自由主義諸国では制約が強まっている。ところが、中国では、何の制約もなしにビッグデータが集まり、それを用いてAIの能力を高められる。国と企業の関係が共同的で、軍民融合体制によっても先端技術が開発される。

われわれは、自由な体制こそが個人の創造力を発揮させ、それによって経済成長が起きると信じていた。

その信頼を基本から揺がせる事態が生じているのかもしれない。そうであれば、これは本質的なチャレンジだ。

しかも、以下に述べるように、アメリカが従来の寛容国家から変貌してしまう可能性もあるのだ。

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