わかりやすくない何かに
惹かれるんです

彼の語り方は、とても訥々としていた。主演映画で、既にいくつものインタビューを受けているはずなのに、あらかじめ練られた回答をスラスラと、というのの真逆である。

ただ、パンフレットにある監督インタビューにある、太賀さんの起用の理由について触れると、それまで静かな印象だった表情が、一気にくしゃくしゃになった。監督はこう言っていたのだ。「この企画をいただいた時、最初にプロデューサーに、主人公は太賀で、とお願いしました。太賀は、今の僕の中で、自分のある種の分身的な存在です。映画の主人公には、少なからず自分を投影することがありますが、自分自身への信頼感のなさ、どこか欠落感や不全感を覚えながら生きている感じ。そういったものを抱えながら生きているという面では、行助は自分の分身であるだけでなく、僕らの世代の象徴にもなりうるキャラクターだと思っています。それを一番誠実に表現できるのは太賀じゃないかと思うんです」と。

中川監督 ©2019「静かな雨」製作委員会 / 宮下奈都・文藝春秋

「そんなの、大袈裟に言っているだけけだと思いますけどね(照)。ただ、俳優部として、監督から何かを託されることは、とても光栄なことだと思います。特に、良くも悪くも僕の場合、さっきの光の話ではないですが、“わかりやすくない何か”の方に惹かれるんです。自分のこの見た目とか、声とか、雰囲気とか、そういうものを駆使して、言葉にできないことを表現できる。俳優としてはとてもやりがいを感じます」

撮影/山本倫子