photo by iStock

アマゾンはなぜ「カメラ付き冷蔵庫」を作ろうとしているのか

テクノロジー基礎教養が必須になる理由
人工知能(AI)、5G、クラウドの3つのメガテクノロジーが合体する2020年代から、「あらゆる企業がサービス業になる」「収益はどこから得てもOK」「職種というカベがなくなる」など、世界は予測もつかない大変化の時代を迎えることになる。米国のFAANG+M(GAFA+ネットフリックスとマイマイクロソフト)や中国のBATHはなぜ、これからますます強くなるのか。日本の企業が進むべき道とは。
「未来のテクノロジー・ビジネスの入門書」である山本康正氏の『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』の「はじめに」から一部をご紹介します。

2年後のビジネスは「三角形」を中心に進む

20世紀初頭のニューヨーク。当時の街の交通を担っていたのは圧倒的に馬車だった。それからわずか十数年後、交通の主役は車になった。10年ほどの間に、それまで当たり前の存在だった馬車がニューヨーク五番街の道路から消え失せ、大量の車が走るようになった。

ここで示される教訓は2つ。便利な変化は短期間のうちに劇的に進んでいくという点、そして、劇的な変化は人々が気づかぬうちに静かに進行していくという点である。

photo by iStock

同様の大変化は現在も静かに進行している。

それはたとえば、こんな形で現れてくるはずだ。想像してみよう。

たとえば巨大企業のアマゾンは、いま冷蔵庫をつくっている

冷蔵庫に「カメラ付き冷蔵庫モニター」を設置できれば、そのモニターが冷蔵庫の中を常に360度監視し、あらゆる食材のデータを集める。なくなった食材、少なくなった食材を知らせ、的確なタイミングで販売につなげる。カメラの画素数が上がれば、冷蔵庫の隅々の食材を正確に特定できるので、ヌケ、モレがなくなり、販売チャンスを逸することがなくなる。その人の食材の好みの傾向を正確に割り出して的確なリコメンデーションを提供することも可能だ。

 

現段階ではこれは空想にすぎない。ただし、アマゾンが冷蔵庫を開発しているだけでなく、冷蔵庫の中にカメラを設置する技術で2019年8月に特許を取得したのは事実である

やがて、アマゾンは本棚やベッドや洋服にも〝進出〟するかもしれない

たとえば、アマゾンがカメラやセンサー付きの本棚を作って安価で提供したとする。本棚が映った画像を人工知能に解析させ、あらゆるデータを読み取り、その人の好みの傾向を正確に割り出すことで「おすすめの本」を提供できるかもしれない。

ベッドも同様である。横になった回数、時間や寝返りを打った回数、寝る位置、寝る態勢など、睡眠中のすべてのデータを集められれば、その人に完璧にフィットするベッドが誕生する。洋服にセンサーが埋め込まれていれば、どの服をどのような頻度で着たか、どのような天候の日に着たかがわかり、シチュエーションごとのリコメンデーションが提供されるようになる

大変化に直面し、求められるもの

冷蔵庫、本棚、ベッド、洋服。家電や家具のような、生活におけるあらゆる空間にあるものがデータ化されることで、私たちの生活はそれまでと一変するだろう

これらは想像上の一例だが、ビジネスに関わるテクノロジーが急激に進化しているのは明らかである。この進化がさらに進んでいくのは間違いなく、そのとき、私たちが直面するビジネスも大きく変わっているはずだ。

はたして、どのように変わっていくのだろうか。いまのところ、それを予測するのは簡単ではない。ただ、そのヒントをつかむのはできないわけではない。

何年か前から、いわゆる「リベラル・アーツ」が注目されてきた。ビジネスの周辺知識や、取引相手とのコミュニケーションを円滑化するための教養は、確かに必要だ。

しかし、リベラル・アーツはビジネスの変化のヒントにはならない。テクノロジーの進化をつかむには、それだけでは足りない