東京五輪ユニフォーム発表、やっぱりモヤモヤするいくつかの理由

本気度が見えてこないJOCの選考
安城 寿子 プロフィール

著名なデザイナーに頼めば解決?

2018年の記事でも指摘したように、ここ最近の五輪でJOCが行っている公募はデザイン生産一体型で、応募時に、デザイン画や試作品の提出だけでなく、何百着という公式服を生産するための人員配置の説明や縫製工場の確保が求められます。ちなみに、今回の公募で指定された着数は約1600着(注4)。そのため、自社工場や大量仕入れのルートを備えていないとなかなか参入が難しく、現実的に、大手メーカーや百貨店以外にはハードルの高い「公募」になってしまっているのです。

 

さらに、これも2018年の記事で触れましたが、公募の条件に盛り込まれた「デザイナーの個人名は公表しない」という文言が、大手メーカーや百貨店と著名なファッションデザイナーが組んで応募するのを難しくしています。選ばれたところで自分の名前が出ない仕事をよしとするファッションデザイナーはどれくらいいるのでしょうか。デザイナーに対する評価の高さに比例してその数は少なくなるはずです。

もっとも、建築やグラフィックデザインの場合とは違って、ファッション業界にコンペの文化がそこまで根付いていないことまで踏まえて考えると、こうした公募の条件が見直されても、そこに著名なファッションデザイナーが参入してくる可能性にはそこまで期待が持てません(注5)

結局、公式服を著名なファッションデザイナーにデザインしてもらうには、かつてJOCがそうしてきたように、公募など行わず、「一本釣り」で誰かを指名し、生産だけ分離した形でどこかに依頼するのが一番なのです。一例として、2004年のアテネ大会では、高田賢三が指名され、生産は当時JOCのスポンサーだったファーストリテイリング(ユニクロ)が無償で手がけました。ちなみに、賢三がデザインしたこの公式服も決して評判が良くなかったらしいことの痕跡がウェブ上に散見されます(注6)

多くの人がモヤモヤしているのは、JOCがどうして再び「一本釣り方式」を取らないのかということだと思うのですが、今回、JOCは、そうするための努力をしていた可能性があります。

2017年夏、筆者は、以前から付き合いのあるアパレル業界関係者から、世界的に非常に高い評価を得ているファッションデザイナーAのところに東京五輪の公式服のデザインの依頼が来たが、Aはこれを断り、現在(2017年5月時点)は、Aよりわずかに年下のBとの間で交渉中らしいとの話を耳にしました。Aが依頼を断った理由も詳しく聞かせてくれました。あくまで伝聞であり、真偽を確かめる術はありませんが、この話が事実であるとすれば、最終的に、Bとの交渉もまとまらず公募になったということになります。