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「ペンギン」を漢字で書けますか? 旭山動物園で漢字を学ぶ

ヒントは「つま先立ち」にあった!
私たちは日々漢字を意識せずに漢字を読み書きしています。しかしその一方で、難読漢字がテレビのクイズ番組にて出題されることも少なくありません。そんな奥が深い漢字の世界について、阿辻哲次氏の新刊『日本人のための漢字入門』からご紹介します。あなたは「ペンギン」を漢字で書けますか?

古代の「旅」は楽しくなかった?

学校に勤めていたころは書物と学生が仕事相手だったからそれほど実感がわかなかったが、年末年始や春秋の行楽シーズン、ゴールデンウイーク、あるいは夏休みなどでは、空港や鉄道の主要駅、あるいは高速道路に大量の人や車が押し寄せ、驚くべき混雑が発生する。

 

経済学にまったくうとい私でも、内外のさまざまな要因で景気が浮沈し、それが大きな社会問題として話題になっていることはニュースで見て知っているが、しかし行楽シーズンの混雑や渋滞を見ていると、多くの人には、景気の動向にかかわらず、旅行のためだけに使われる別の財布があるのではないか、と思われてくる。

とかく現代人は旅に出たがるものだ。人の趣味はさまざまだというけれど、旅行がきらいという人はめったにいない。

もちろん私も旅行は大好きだ。国内外を問わず、旅先ではその土地独自の珍味や銘酒を味わえるし、都会の雑踏を離れれば、素朴でおだやかな人情に接することも多い。何よりも旅先では普段の生活からは得られない素敵な発見があって、固くなった頭をほぐすことができるし、日常に埋没している自分を外側から見直すこともできる。

しかしそれは現代のレクリエーションとしての旅に備わる楽しみであって、はるか昔の旅はまったく意味がちがう行動だった。旅とは何かの必要があっておこなわれる移動であり、決して楽しいものではなかった。

今の漢字辞典は「旅」という漢字を4画の《方》部に収めているが、もともとは「旗」や「族」、「旋」などと仲間の字で、古くは《》という部に所属していた。《》は《方》と、「旅」や「旗」の右半分の上をあわせた形で、「吹き流しをとりつけた旗」をかたどっている。

「旅」はそんな旗をもった人の後ろに何人かがつき従っている形で、旗を先頭に立てて行進しているのは、どこかと戦争するために進軍している兵士たちであった。

旅先でも漢字は学べる!

古代の文献に見える「旅」は戦争に出かける軍隊の編制単位を意味する文字で、周の時代の諸制度を記した文献『周礼』(夏官・司馬)によれば、兵士500人の集団を「一旅」と呼んだ。昔の日本軍でも「旅団」という編制単位があり、それがまさしく「旅」という漢字をその意味で使っている例である(ちなみに兵士2500人を「師」といい、ここから「師団」ということばができた)。

どんなに旅行好きの人でも、そんな「旅」はまっぴらごめんだろう。誰だっていかめしい軍旗よりも、添乗員さんがもつ旗についていくほうが楽しいし、旅先ではもちろん平和な時代の風景にめぐりあいたいに決まっている。

私もこれまでの旅ではずっと、多くの方々と同じように、楽しくて幸せな、忘れがたい感動をたくさんいただいてきた。だが旅先でも看板や掲示を目にすると、習い性となった漢字屋の本性がむくむくと起こってくる。

旅先では見慣れた漢字まで、いつもとちがう新鮮な発見と知識をあたえてくれる。ここではそんな事例を紹介したい。