# ホラー

「犬鳴村」が“日本最恐”と呼ばれる存在になった「納得の理由」

映画公開でも大きな話題に
朝里 樹 プロフィール

現実の心霊スポット「犬鳴峠」

杉沢村の伝説の元になったのは、岡山県で1938年に実際に起きた殺人事件「津山事件」であると考えられている。この事件では一人の犯人により一晩にして30人の村人が殺され、犯人も自ら命を絶った。この事件は横溝正史の小説『八つ墓村』のモチーフともなった。

この他にも青森県では1953年に「青森新和村リンゴ農家一家八人殺人事件」と呼ばれる大量殺人事件が起きており、こちらも杉沢村伝説のモデルとなったと言われている。

 

このように、杉沢村は大量殺人事件のその後を語る物語とされる。では犬鳴村のほうはどうなのかといえば、モデルとなるような事件は見受けられない。

しかし、犬鳴村には関わりの深い心霊スポットがある。それが「犬鳴峠」だ。

元々、犬鳴村が付近に存在するとされる犬鳴峠は心霊スポットとしても有名だ。この犬鳴峠に現在は使われていない「旧犬鳴トンネル」と呼ばれるトンネルがあり、1975年に新しいトンネルが開通して以降は心霊体験がよく語られるようになった。

(C)2020「犬鳴村」製作委員会

さらに1988年にはこの場所で殺人事件が起き、焼殺された犠牲者が見つかったこともある。この事件も心霊スポットとしての犬鳴峠の名を広めた。

犬鳴峠と犬鳴村はそれぞれ別個の恐怖を内包するスポットだ。しかし二つは地名を共有し、地理的なつながりがあるとも語られることから、しばしばセットで紹介される。

つまり、犬鳴の伝説は、心霊という超常的な恐怖と、言葉や常識の通じない人間に襲われる現実的な恐怖、そのどちらも同時に襲ってくる可能性のある恐るべき場所と化している。さらに犬鳴峠が実在する場所でありながら、犬鳴村が明確な所在地の分からない場所となっているため、現実と謎の空間が隣り合わせにある珍しいスポットとも化している。