AYA世代の不安は、情報のなさと強烈なまでの孤独感

24歳のとき自覚症状があってクリニックを受診した岸田徹さん(32歳)も、半年以上たった25歳で胚細胞性腫瘍と宣告された。

「首のリンパ節が腫れて受診しましたが、原因が分からないと放置されました。半年後、ソフトボール大まで腫れあがり体調も悪く、数件の病院を受診。やっと胚細胞性腫瘍と診断されたときには、がんが全身に広がっていると言われました。まさかこの若さでがんになるとは思っていませんし、希少がんは原因が分からないことも多い。がんの発見が遅れたという話は僕以外にもよく聞きます」

さらにショックだったのは、手術後“妊孕性(子供を作る能力)”を失ったことだった。「この先、男として生きる価値があるのか」と、とても悩んだそうだ。

「同じ病気の妊孕性について検索しても、まったく情報がない。情報がないことがこんなにも絶望につながるのかと思いました。そしてやっと同じ病気の人とネットでつながり、妊孕性が快復したという体験談を聞かせてもらったことで、将来への一筋の光が見えてきました」と岸田さん。

AYA世代が抱える不安の元は、情報の少なさと、似た境遇の人が周りにいない強烈な孤独感だという。そこでAYA世代や希少がんを含めた幅広いがんの経験者に体験を語ってもらい、不安の解消に役立てればと始めたのが、がん患者のインタビューをYouTubeでライブ配信する『がんノート』だ。

左が岸田徹さん(32歳)。現在は、『がんノート』主宰者として日本中を飛び回っている。

「医療のことは医療者に聞けますが、本当に知りたいことは、お金、性、仕事といった生活に一歩踏み込んだ情報なんです。プライベートなことでも、みなさん意外と詳しく話してくれます。さらに、ネットなら全国どこでもつながれます。がんの種類は違えども、AYA世代や希少がんの人が抱える悩みは似ているため、体験をシェアし発信側と視聴者がコミュニケーションをとることで、勇気づけられることがあると思います」(岸田さん)

がんノートの配信は月2~3回ペースで、この1月で217回目を迎えた。がんの種類は希少がんも含めて豊富だが、インタビューは、生活のことが中心。その人らしさが出る、ゆるい場を目指しているという。

「最近特に、地方へ行くほど、“がんノート見ています”、“がんノートで勇気をもらいました”という声をもらいます。放送を続けていく中で、地域の特色や情報格差があることも見えてきました。今後さらに地方での開催回数を増やしていきたいと計画しています」(岸田さん)