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「中流からの脱落」に怯える“おっさん”とポピュリズムの深い関係

彼らの深い深い絶望

世界をポピュリズムが席巻しているが、その背景には、中流からの脱落に怯える“おっさん”の存在がありそうだ。いったいどういうことなのか…? 訳書『不道徳な経済学』を上梓した、作家の橘玲氏が解説する。

誰がトランプを支持したのか

イギリスが国民投票でEUからの離脱を決め、ドナルド・トランプがアメリカ大統領に当選した2016年の衝撃から3年が過ぎて、欧米先進国を中心に世界を揺るがすポピュリズムの実態が徐々に明らかになってきた。

アメリカの進化心理学者スティーブン・ピンカーは、最近翻訳の出た話題の書『21世紀の啓蒙 理性、科学、ヒューマニズム、進歩』(草思社)のなかで、権威主義的ポピュリズムの支持者は、よくいわれるような「経済競争の敗者」ではないと述べている。

アメリカ大統領選の結果についてアナリストたちが詳細に調べたところ、六分位の所得階層のうち下位二つの低所得層(世帯年収5万ドル未満)に属する有権者は52対42でヒラリー・クリントンに投票した。それに対して所得階層の上位四つ(世帯年収5万ドル以上)の高所得層に属する有権者の大半はトランプに投票していた。

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トランプに投票した有権者は「移民」と「テロ」を最重要課題とみなしており、そこに「経済」の要素はなかった。「メキシコとの国境に壁をつくる」「テロ国家(イスラーム圏)からの入国を禁止する」とトランプが繰り返し唱えたことは、どれほど荒唐無稽に思えても、選挙戦略としてはきわめて合理的だったのだ。

著名な統計学者であるネイト・シルバーは、「誰がトランプに投票するかは、所得ではなく教育が予測した」と指摘している。さらに、トランプ支持者の分布を示す地図は、失業者や銃所持者、宗教、移民比率を示した地図とは必ずしも重ならないが、Googleで「nigger(黒人の差別語)」という単語を検索したひとの分布を示す地図とは重なっていたという。

それに加えて、選挙の出口調査によって、トランプ支持を予測する際にもっとも一貫した判断材料になるのは「悲観主義」であることもわかった。トランプ支持者の69%が、国の方向性は「完全に本来あるべき方向からずれている」と感じていた。