あなたは自分の中に「天才」がいることに気がついているか

我々の心の中で「直観」が閃く理由
田坂 広志 プロフィール

天才はなぜ、驚異的な才能を開花させられるのか

実際、科学・技術の分野であれ、絵画・音楽の分野であれ、文学・文筆の分野であれ、いかなる分野においても、世の中で「天才」と呼ばれる人は、周りの誰が見ても、驚異的なほど、その才能を開花させている。

 

その姿を見て、多くの人々は、その才能を敬し、羨むと同時に、「あの人は、天与の才能があるから…」「あの人は、生まれつき頭の構造が違うから…」「あの人は、遺伝子やDNAが違うから…」といった言葉とともに、その才能が「生得的」なものであり、自分たち普通の人間には決して開花させることができないものであるとの諦めを抱き、深い「自己限定」の意識を抱いてしまう。

しかし、世の中で「天才」と呼ばれる人々を見ていると、実は、分野は違っても、一つ、共通の特長があることに気がつく。それは、何か。

「自己限定」をしない。 

実際、「天才」と呼ばれる人々は、不思議なことに、それが科学・技術の分野であっても、絵画・音楽の分野であっても、文学・文筆の分野であっても、決して「自己限定」をしないのである。「自分には、できない…」「自分には、無理だ…」「自分には、不可能だ…」といった「自己限定」の意識を持たないのである。

スティーブ・ジョブズの「現実歪曲空間」

例えば、iPod、iPhone、iPad などの開発によって情報技術の分野で劇的な変革をもたらしたアップル・コンピュータの創業者、スティーブ・ジョブズ。誰もが「天才」と認めるジョブズは、「現実歪曲空間」(Reality Distortion Field: RDF)を生み出す能力があると言われていた。

すなわち、ジョブズが一つの製品の開発を提案するとき、最初は、周りのスタッフの誰もが「現実的に見てそれは不可能だ」と思うコンセプトを提示するのだが、それらのスタッフがジョブズと熱い議論をしていると、段々と、それが実現できそうな気がしてくるのである。

これを、周りのスタッフが尊敬の念を込めて「現実歪曲空間」を生み出すカリスマ的能力と呼んだわけであるが、もし、ジョブズが「天才」であるならば、それは、何よりも、彼が「自己限定」をしない人物であったからであろう。

「天才」スティーブ・ジョブズ(photo by iStock)

こうした「自己限定」の意識を持たないという特長は、ジョブズだけでなく、現代の天才的起業家と呼ばれているイーロン・マスクが、堂々と、2020年代に「火星移住計画」の第一段階をスタートすると宣言している姿も同様であるが、古くは、天才的発明家エジソンが、数千回の材料実験に失敗したとき、「素晴らしい成果を挙げた。これらの実験を通じて数千種類の材料が役に立たないことを発見したからだ」と述べたことにも象徴されている。

そして、天才が「自己限定」の意識を持たないという事例の極めつけは、軍事的な天才と呼ばれたナポレオン・ボナパルトが、「吾輩の辞書に不可能という文字は無い」という言葉を残していることであろう。