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あなたは自分の中に「天才」がいることに気がついているか

我々の心の中で「直観」が閃く理由
誰しも一度は、「自分が『天才』だったら……」と思ったことがあるはずだ。「天才」は、生まれつき驚異的な才能を持った一握りの成功者だけに与えられる称号だと考えられている。

しかし、田坂広志氏は近刊『直観を磨く 深く考える七つの技法』で、自分の心の中にいる「賢明なもう一人の自分」と対話することで、誰しもが「天才」としての能力を発揮することができると説く。

では、「賢明なもう一人の自分」と出会うには、どうすればよいのか? どうすれば私たちも「天才」的な能力を発揮することができるのか? 『直観を磨く 深く考える七つの技法』からお届けする。

「自己限定」が能力の発揮を妨げる

我々誰の中にも素晴らしい能力を持った「賢明なもう一人の自分」がいるにもかかわらず、なぜ、そうした能力が、日常の思考において発揮されないのか。その第一の理由は、明確である。

 

自分の中に、そうした力があると信じていないからである。

いや、むしろ、我々の多くは、「自分は直観力が無い」「自分は記憶力が悪い」という無意識の「自己限定」をしてしまっているそのため、この「自己限定」が、我々の力の発揮を妨げ、ときに、無残なほど萎縮させてしまっているのである。

分かりやすい例を挙げよう。例えば、いま、チョークで地面に30センチ幅の2本の線を引く。そして、誰かに「この線の内側を歩いてください」と言えば、健常者であれば、誰でもその線を踏み外すことなく歩ける。

しかし、もしそれが、断崖絶壁の上に架けてある30センチ幅の板の橋であったならば、我々は、「落ちたら死ぬ」「こんな橋、歩けない」と思ってしまい、その瞬間に、足がすくんで一歩も踏み出せなくなる。

「想念の負のスパイラル」が「自己限定」を助長する

このように、我々は、「自己限定」の意識が心を支配した瞬間に、本来持っている能力を無残なほど発揮できなくなるのである。それは、表面意識の「自己限定」はもとより、無意識の「自己限定」であっても同じである。そして、それは、狭い道を歩くといった「肉体的能力」だけでなく、直観力や記憶力といった「精神的能力」も、同様である。

例えば、大学の入学試験などで、いつもの校内試験では良い成績を残すのに、本番の試験では上がってしまい、持てる力を発揮できなくなる例など、決して珍しくない。

また、社運をかけたような極めて重要な商談において、「今日の商談は絶対に失敗できない」「いや、失敗したらどうしよう」「自分では、この強面の顧客を説得できないのではないか」といった「想念の負のスパイラル」に入ってしまうと、強いプレッシャーと「自己限定」の意識の中で、いつもなら閃く直観が働かず、簡単なことさえ思い出せないといったことも起こる。

このように、心の中に宿る「自己限定」の意識は、我々の「肉体的能力」だけでなく、「精神的能力」をも大きく萎縮させてしまうのであるが、この事実を理解するならば、我々は、昔から多くの人々が抱いてきた一つの疑問に、答えを見出すだろう。天才は、なぜ、驚異的な才能を全面的に開花させることができるのか。その疑問である。