100万人の子どもが「読む楽しさ」に目覚めた…講談社おはなし隊の20年

たくさんの本に触れる「非日常」
飯田 一史 プロフィール

――厳しい時代ではありますが、そうやって、読書体験が次の世代につながっていく実感もあるのですね。

 ポジティブな面に目を向けると、出版業界以外にも、読書推進活動に手を挙げてくださる企業が増えてきました。たとえば最近は日本ハムさん、セレッソ大阪さんなどが熱心に取り組んでいらして、セレッソ大阪さんとは正式にコラボすることになりました。そういう動きがもっと広がるといいですね。

 

――おはなし隊の今後の展望は?

 昨年はキャラバンカーの具合が悪くてお休みする期間がありましたが、今後は頻度を少し落としながらも、長く継続していきたいと思っています。4トントラックを園や学校の敷地内に停められる場所でないと行くのが難しいという問題があって、土地が狭い東京・神奈川をはじめ都市部での実施機会が限られていたのですが、最近ではおはなし隊の隊長が本を携えて単身で伺う、という取り組みも始めています。

加えて、前述のような外部の企業と組んでよりオープンな場でおはなしをする、あるいは著名人の方にお声がけして読み聞かせに参加していただくなど、より多くの方に活動を認知していただいて、子どもたちが本に興味を持つきっかけを今まで以上に作っていきたいと思っています。

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おはなし隊に限らず、90年代末から、政官民を問わずさまざまな読書推進政策・活動が始まっている。そのなかでもこの活動は人口の多い都市部に限らず、全国津々浦々を回って「おはなし会」を開催し、また「おはなし会」なる活動の存在自体を繰り返し発信し、認知させていったことに意義がある。

また、キャラバンカーの物珍しさ、それに目いっぱい積まれた多種多様な絵本に象徴される「非日常性」が、子どもに本への興味を喚起する良い機会になっている点も、ほかの読書推進活動には見られない特徴である。

ただし、読み聞かせ(おはなし会)はさかんに行われているわりに、定量的な調査や記録がほとんど行われていない。その変化や成果を知るには、本インタビューがそうであるように、当事者が持つデータと定性的な情報に頼るしかないという課題がある。

本との触れ合いのすばらしさを社会に広く訴えていくのであれば、今後は出版業界が主体となって継続的な定量調査を行い、読み聞かせの実像と、それがもたらす効力を発信していく必要があるだろう。