100万人の子どもが「読む楽しさ」に目覚めた…講談社おはなし隊の20年

たくさんの本に触れる「非日常」
飯田 一史 プロフィール

もうひとつは、図鑑の人気です。ここ十年でDVD付き図鑑が当たり前になり、以前は「勉強のため」だった図鑑が「楽しむため」のものに変わってきたのではないでしょうか。おはなし隊にも『講談社の動く図鑑MOVE』の「恐竜」「生きもののふしぎ」などを2、3冊入れていますが、ものすごく人気で、2か月に1回は入れ替えないといけないくらいボロボロになります。

――確かに、昔と比べてインタラクティブな要素があったり、娯楽性・視覚性が高かったりする、やわらかい本が増えた印象はあります。子育てに対する社会の変化は感じますか。

 書店さんやショッピングセンターでおはなし会を開くと、以前の参加者はほとんどお母さんとお子さんでしたが、最近ではお父さんの姿が目立ちます。お母さんが買い物をしている間に、お父さんが子どもを連れてくる。幼保でも登園やお迎えにお父さんの姿を見ることが増えています。

一方で気になるのは、キャラバンカー見学の時間に、タブレットを操作するように絵本を指でフリックして動かそうとする子がいることですね。おうちでお母さんが家事をしているあいだに、ひとりで絵本アプリや動画を見ていて、読み聞かせしてもらったことがあまりないのかな、と……。

 

少子化という課題

――読書推進運動はおはなし隊を含め、子どもの読書に関して一定の成果を挙げてきたと思いますが、以前と比べて難しくなってきたと感じることはありますか?

 先生方に「来ていただきたいのですが、帰りのバスに間に合わないので午後の回には呼べないんです」と言われることが増えました。というのも、今は全国で学校や園の再編が進み、数が少なくなってきているんです。

たとえば、今度おはなし隊は香川県の小豆島に行きますが、これまで地区に4つあった小学校が合併して1つになっています。そういうところでは、遠方から通う子どものために何時までのバスに乗せないといけない、といった制約があります。

また、児童書市場は統計上は堅調とはいえ、残念ながら書店がなくなった自治体が増えています。学校図書館も予算の問題からか、学校司書さんが1人で複数校を同時に見ているところが少なくありません。そうした環境の中で、どうやって子どもたちに本に触れてもらう機会を作るかは、依然として業界全体の大きな課題だと感じます。

以前はお手伝いしていただくボランティアをその地域で募集していましたから、現地で説明会のときに地方の新聞社さんも回っていました。記者の方に「みなさんのお仕事を続けていくためにも、子どもたちの読書は大事です」と説明すると、かなりの新聞社さんが取材に来てくださいました。「子どものころ、おはなし会に参加した」と言ってくれた若い記者さんもいましたね。