100万人の子どもが「読む楽しさ」に目覚めた…講談社おはなし隊の20年

たくさんの本に触れる「非日常」
飯田 一史 プロフィール

――初期のころの話をうかがいたいのですが、おはなし隊がスタートしたのは1999年。出版市場全体が史上最大の2兆6564億円に達したのは1996年ですが、同時期、たとえば『出版年鑑1998年版』(出版ニュース社)には「児童書部門は全ジャンルの中で売れ行きがもっとも落ち込み、6年連続前年割れ」と書かれています。

さらに毎日新聞社と全国学校図書館協議会による「学校読書調査」では、不読者(1か月に1冊も読んでいないと回答した人)の割合は1997年に小学生で15.0%、中学生では55.3%、高校生では69.8%と過去最悪の結果となるなど、子どもの本にとっては「冬の時代」でした。そんななかでおはなし隊を始めて、困難はありませんでしたか。

 私は当時、児童書の販売部に在籍していましたが、1990年代後半は、弊社で言えば青い鳥文庫で、はやみねかおるさんの『夢水清志郎』シリーズ、松原秀行さんの『パスワード』シリーズをはじめ、どんどんヒットが出ていました。夏休みの読書感想文の課題図書に選ばれれば10万部、20万部という時代です。ですから、小学校中学年以上の読み物はそこまで悪くなかったけれども、絵本は今と比べると停滞していたのかな、と思います。

絵本は、いわゆる岩福(岩波書店、福音館書店)さん、学校・公共図書館では十社の会(あかね書房、岩崎書店、偕成社、学研、金の星社、国土社、小峰書店、童心社、ポプラ社、理論社、ほるぷ出版で構成される会)のロングセラー以外はなかなか厳しかった、という印象です。そうした流れから「絵本を積んで、もっと子どもたちに直接届けに行こう」とスタートしました。

当時はまだ、そんなことはどこもやっていませんでしたから、どういうところに行っていいかわからない。そこで講談社が事務局となって、全国の書店さん経由で幼稚園や保育園をご紹介いただき、さらには書店店頭でもおはなし会をすることになりました。そして全国をまわるうちに、徐々に地方紙などの告知から応募が増えるようになっていきました。

 

子どもを惹きつける本は、変わらない

――読書推進の政策・活動が実を結んで、少子化にもかかわらず現在では児童書市場は堅調で、小中学生の不読率(まったく本を読まない人の割合)は過去最低レベル、平均読書冊数は過去最多レベルになりました。この間の変化についてうかがえればと思います。スタートしてから、やり方を変えた部分はありますか。

 おはなし会の内容は反応を見ながら少しずつブラッシュアップしていますが、読み聞かせ30分、自由閲覧30分というフォーマット自体はほとんど変わっていません。

ちなみに、いま便宜的に「読み聞かせ」と言いましたが、始まった当時はまだこの言葉自体がそれほど浸透しておらず、「偉そうだ」という声も少なくありませんでしたので、正式にはずっと「おはなし会」と呼んでいます。

ただ告知の方法は、今ではTwitterや公式サイトでの募集と、前回・前々回に訪問したところへのDM送付、書店さんからのご紹介がメインに変わってきており、新聞での告知はお休みしています。